level.46 すにーきんぐ みっしょん.トゥー!!
「オネエさん、ちょいとそこの“『超』クールなオネエさん”」
ん?
変化の術でも容貌がまったく変化しない“ナイス人型長身バディ”を
恐れ多くも維持したままの《???》が
男型の〈ニンゲン〉に絡まれております。
「これから俺とお茶しない?」
俺と『オチャ』……はて、なんのことでしょうか?
響きからすると、なんだか危険な匂いがします。
ここは断るべきでしょう。
「ダメダメ、あなたと『オチャ』なんてできません。転んだらどうするんですか」
「……はあ? 誰コイツ? お前に用はねーよ。俺の目的はこっちの『超』クールなオネエさん。あっち行かねーと、痛い目に遭うぜ」
「ひい」
「オイ、そこのナマイキな〈ニンゲン〉。代わりに“俺”が相手してやる」
おお。頼りになる大きな背中。目の前に立ちはだかるのは
《布のティーシャツ(装備品)》からはみ出るほどの
毛むくじゃらのキンニク大男。
私もこんなボディにすればよかった。
「ここは任せろ相棒。おりん様が先ほどから見当たらない。探してくれるか?」
「おりんちゃんが? そういえば《リトル・ウィッチ》も消えましたな。大変、急いで探しに出かけなきゃ――おおっと足元が滑りましたあ! あぶッ、危なァ。《猫男》、あなたも勢い余って転ばないでくださいよ。変化が解けますので」
「お互いに気を付けような。すぐ片づけて後を追う」
《???》は親友に任せてオッケー、これでバッチリ大丈夫!
こんな恐ろしい場所に若い女型が、ふたりきりでフラフラなんて
危険なフラグがビンビンじゃないですか!
まさか既に『オチャ』してたりして。あぶッ、危なァ!!
「……いいですか、飲み方には正しい作法があります。こうして、こうやって、そしてこうするのです。最後に加えるのは相手を思いやる心です。それがイチバンのうまみ調味料」
居ました居ました! 例の消失した“あのふたり”。
〈ニンゲン〉しているところを見ると、まだ転んではいないようです。
「見学のお嬢さんたちもどーぞ。これが当家の正式な作法で淹れた“お茶”です」
「ま、ま、待ったァ! その『オチャ』待った待ったあ!」
午後の優雅なマダム風の〈ニンゲン〉どもが集まる中で、
宝石のようにキラキラ輝く“おりんちゃん”と、地味なウチのねこ娘。
彼女たちは目を丸くして、慌てて駆け付ける私を見ます。
「ポチサマ? なんで?」
「……ポチ殿、そのように走られては危険です。おやめなさい」
「危険なのは、その『オチャ』ですぞォ。ふたりとも、おやめなさァ――」
あっ。
足が――急に、も、もつれ――
走馬灯のように風景が巡ります――
もしかして――これは、“いつものヤツ”……?
ズッ(こける私・真バージョン)。
「……あれ? 私、どうして転んでない?」
「まったく。あれほど強調したのに」
フワフワなこの感触。
そして不思議なことに間近にある、おりんちゃんの綺麗な顔。
「正体がバレたら、どうするつもりですか。作戦が台無しです」
ええーっ!
なんて……なんて究極にベタな展開なんだ……
そして恥ずかしいことにシチュエーションが真逆。
音速を軽く突破して
すっ飛ばして来たおりんちゃんに、お姫様抱っこされる私。
例えようのない――強いて言うなら――とても素晴らしいフェロモンが
彼女からムンムン漂って、カサついた私の心身に急速に染みていきますぅ。
「赤いマジックペンで、あなたの顔に書きましょうか。転んではいけません、って」
ああムギュー。
このまま永久に眠っていい、というか是非そうしたい。
まるで線香花火のような、とても短い我が人生に一片の悔いナシッ!
うひょうひょ。
うひょひょひょ!
「ゴラア、ポチィ! 私のオネエサマになにしとんねん、サッサと離れんかい!」
「アダァ」
「ポ、ポチ殿! 頭のてっぺんから赤いモノが」
「なんだか目の前が徐々にブラックアウトを始めました……これはマジで眠りに就きそう。《リトル・ウィッチ》殿のマジツッコミが『会心のツッコミ』にぃ……トホホ。でもラッキー」




