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悪代官サマ と ユカイな仲マたち  作者: 中田 春
【 迷いのマの森 】 編
41/82

level.40 どらのすけ 「この物語の“お約束”を…」

 


 からんころん。



 入り口に吊り下げられた子供用の下駄が来訪者を知らせます。

 鈴の音の可愛らしい“ちりりん”と違って

 おどろおどろしい響きがございますな。


「ん」



 すると《猫男(どらのすけ)》、

 ついさっき入店した《犬女(うーわん)》をちら見。

 発言が止まります。



「……で、だ。ここからが重要だぞ転校生。いいか『べろん』支店長は」


 若い女子社員はなぜか、完全『するー』する《猫男》。



 からんころん。

 またもや入り口に吊り下げられた子供用の下駄が来訪者を知らせます。

 そして、やはり発言を止める《猫男》、

 入店する客を再度ちら見――いえ、がん見っ。



「おおっ! こいつぁ『ないすばでぃ』の《山姥(ぐらんば)》だっ」



 先ほどからこの調子。

 話が前に進みません。

 すると入店した《山姥(ぐらんば)》、

 席に着いていた別の《山姥(ぐらんば)》を見て親しげに声を掛けます。

 そしてその場でいきなり始まる世間話――



 嫁が

 息子が 

 近所が 

 年金が

 しかし大いに盛り上がるのは決まって互いの健康問題。



「お前ならどっち?」



 はい、か、いいえ、の選択を《猫男》に急に迫られます。

 あちらの若い《犬女》ではなく、そちらで盛り上がる彼女(?)らを見て、

 さすがに「はい」とは申せません。

 この後の展開にたとえ差し支えるとしても、

 安易に「はい」と言っちゃう自分を、誰より自分が許せません。

 精いっぱいの微笑で、なんとかこの窮地を切り抜けてみようと思います。



 しかし入店する《山姥》を見て、いちいち興奮する彼の心理状態は

 危険な匂いがしました。



 私の前で、同じように大量の汗をかく『あまざけ』。

 おごってもらって恐縮ですが

 うまー、ではありません。

 思い出されるのは【あんぞるごんのあ大灯台】支店で頂いた

 回復『あいてむ』のなんと、うまー、だったこと。

 この『あまざけ』は“なにか”が喉の奥に引っ掛かりますので。



「どっちだろうなあ。転校生はたぶん“あっち”かな!“こっち”かな!」



 どうしても答えなくてはなりませんか……。



「あっち?」

 いいえ。

「じゃあ、こっち?」

 違います。

「ねえ、どっちどっち?」

 しつこいですね。


「と、冗談はこのくらいで」


 ようこそ親友、お帰りなさい。

 あなたが居るところは、私には高くて登れません。


「うひゃひゃひゃひゃ」



 蔦が生い茂っております。

 屋内のはずなのに、この恐ろしいほどの開放感。

 おどろおどろしいのは入り口に吊る子供用の下駄だけで

 店内は一転してお洒落です。



 照明代わりの《化提灯(ばけらったん)》があちこちで働いておりますな。

 私の上にも《化提灯》がひとつ。先ほどの奇妙な笑い声はそれにござい。

 盛り上がる客同士の世間話に、ちょこちょこ入れられる絶妙な合いの手(笑)。



 流行の『植物ばー』の雰囲気を大いに楽しんでおります。



「その……」

 おっと。

 いきなり《猫男(どらのすけ)》が『まじもーど』です。

 こちらも気を引き締めねば。



「『べろん』支店長の恐ろしさだが」



 ごくり。



「俺にもよく分かってない」


 ずっ(こける私)。


「うひゃひゃひゃひゃ」




 期待した私が愚かでした。

 しかし、この物語は元々こういった“くだらない話”にございます。

 ですからある意味これ正解。

 いやはや、さすが親友。

 今一度、『原点に立ち返れ』という親心ですな。

 どうか気負うことなく、皆様も読み進めてください


「あっつぅ」


 ありがとうございます。

 あなたが居るだけでなごみます。


「冗談はこのくらいで」

「そうですね。この物語の“お約束”を確認させていただきました」

「うひゃひゃひゃ」




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