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悪代官サマ と ユカイな仲マたち  作者: 中田 春
【 地獄の城塞 】序編
4/82

level.3 《りとる・うぃっち》 が こっちを じぃーー!!

〈マのモノ〉は、がんばるモノが大好きです。

 シミひとつない赤絨毯が伸びる【果てしない恐怖の一本道】は、

 ドキドキワクワクの【悪代官サマの間】へと続いております。

 引き返すなら今のうち。

 これより先、回復施設やセーブポイントは一切ありませんぞ。




 はて? 

 やけに大勢の〈マのモノ〉とすれ違いますな。

 いつもは閑散としている【果てしない恐怖の一本道】なのですが

 やはり“今日”は、ちょっと事情が違う様子。




 いつになく慌ただしく通り過ぎる《ダーティーモンク(暴力神官)》。

 ジロジロと、意味ありげな視線を送るキケン行為は絶対NG。

 まず間違いなく、からまれます。

 髪の毛の下から、そっと覗き見ましょう。

 〈マのモノ〉の大半は髪の毛ないんですけどね。


 

 おっと。



 華奢な肩をいからせて、キュートなオシリをプリプリさせて、

 向こうから歩いてくるのは〈マのモノ〉垂涎のマト、

 大人気アイドルグループの

 《リトル・ウィッチーズ(小悪魔的少女団)》のメンバーですな。



 ふてくされております、ふてくされておりますぞッ! 

 “小悪魔的な彼女たち”に一体なにがあったのでしょうか……?



「あのう」


 イチバン後ろを歩くメンバーのひとりを捕まえて、控えめに尋ねます。


「お、お代官サマは……?」

「ああん」

 コワッ。


「もォ、申し遅れましたァ! 私、決して怪しい〈マのモノ〉ではなくて〈新悪代官サマ〉が降臨なさる『超』・『超』・『超』ビック☆イベントの準備を任されておりました――」

「〈新悪代官サマ〉がなに! あんた〈新悪代官サマ〉のなんなワケッ」


 ゴキゲンななめウシロ。


「で、ですから、『召喚の儀』の準備を」

「代官サマ代官サマ……あんたもやっぱり〈新悪代官サマ〉……」

「無事に降臨なされたのですかッ!」


 そうしますと《リトル・ウィッチ》、

 キュートな小顔を真っ赤にしまして、ポコポコポコと、ねこぱんち。

 なんとも愛らしいキャラクターですな。


 ねこ耳にキュン、谷間にクラリ、もうメロメロでございます。

 ツマとムスメが居りますので、このムフフな場面はサイレントモードで。



「プンプン! もう、プンプンなんだからねッ!」

「そのォ……どうして《リトル・ウィッチ》殿は、それほどにプンプンしておられるのですか?」

「ああムカつく! “必要ない”って言われたからよ。身の回りのお世話を申し出たアタイたちを、〈新悪代官サマ〉はアッサリお断りになったの。それに品がないとか下品とか、幼稚とか稚拙とか、まるで本物の悪魔のようにアタイたちを罵るの。ホント信じらんない! これは《リトル・ウィッチーズ(小悪魔的少女団)》結成以来の屈辱だわ!」


 はあ。なんと、もったいない。


「アイツ、ナニサマなのよ!」


 〈新悪代官サマ〉です。


 タタタッ、とまた誰かが近づいてまいります。

 この軽快さは二足歩行タイプの〈マのモノ〉ですな。

 四足歩行タイプは、もっとドタドタいたしますので。



「おうい、そこのモノ」



 すると《リトル・ウィッチ》、

 やれやれといったカンジで、けだるそうに振り返ります。


 さすがアイドル。なんてったッてアイドル。

 どこから取り出したのか、サインペンのフタをキュッと外しまして、

 営業スマイルのカウントダウンに入ります。

 正真正銘のプロであります。



「お前じゃない、ソッチ」



 二足歩行の《リザードマン》、しかし空気をまったく読みません。

 あっち行けと言わんばかりに、準備オッケーの《リトル・ウィッチ》を

 ムキムキの腕で押しのけますな。

 

 メンバーひとりでは、やはりこんなもの。

 彼女たちは複数形で、

 大人気アイドル《リトル・ウィッチーズ》なのでございます。

 なにかの拍子に華々しくソロデビューしたところで、

 ねこぱんちをポコポコ繰り出すしか能がありません。無能であります。



「〈新悪代官サマ〉の『召還の儀』を任されたのは、あんたか?」

「そうです! 誉れあるお役目を仰せつかりました、わ、わ、わ、私は――」

「すぐに来てくれ。サルトン博士がお呼びだ」



 ただならぬ雰囲気でこの《リザードマン》、

 ドスの効いた金色の瞳で私をギロリ。

 なんともなしに《リトル・ウィッチ》がつられます。



 コイツ、本当は“ナニモノ”なんだ……

 興味ゼロだった私に、彼女は一転して興味津々であります。



 と、そして……


 後ろに居たのか紫色の《???(巨大粘液)》。

 まったくストーリーに絡んでこないので存在を忘れておりました。

 我が社の心臓部である【サルトン実験室】を崩壊させた

 紫色の《???》、なにが気に入ったのか不明ですが

 私ソックリの姿をかたくなにキープしたまま

 まさに影のごとくピッタリ寄り添っております。



 おかげで【果てしない恐怖の一本道】に敷かれた美しい赤絨毯が

 ヤツの粘液でジュクジュクジュク……。



 もはや見る影もなし。

 おお恐ろしや。

 “あとの祭り”が盛大に開催中でございます。



 そうして私がモタモタしておりますと

 痛いくらいにグイグイ腕を引かれます。



「い、一体どうしたのですか? あれほど鳴り止まなかった歓声が、先ほどからまったく聞こえてこないのです。なんだか慌ただしいようですし、【悪代官サマの間】で一体なにが……?」

「とにかく来い」




 まるで重石を乗せたように口の固い《リザードマン》の大きな背中は

 これから我が身に振りかかる“未曾有の災難”を予想させるものでした。





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