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悪代官サマ と ユカイな仲マたち  作者: 中田 春
【 迷いのマの森 】 編
38/82

level.37 よめ(?) は おどろいている!?



 しーん。



 な、なぜ……しーん……

 『ふぉろー』がどこからも聞こえてきません。



「我々は、あなた方『狐一族』にとって付属品に過ぎないのではありませんか?」



 ごっほごほ。

 あまりの空気の重さに、ごーっほごほっ、いつもの持病がぁっ!

 やっぱり《猫男(どらのすけ)》、あんたはえらいっ。

 お願いだから親友ぅ、頼むから戻って来てくれぇ! 

 私の『こおりみず』はまだ少し冷えてるぞっ。



「今回の事件も〈金行衆〉だけで、すべて片づけられたそうですね。なぜ、第一層で起きたのにも関わらず、現場を任されるはずの我らが、蚊帳の外に置かれねばならないのか」

「蚊帳の外に置いたつもりはない」

「左様ですか。しかし、狐に妨害されたと若い衆が申しておりましたので。なるほど。食い違っておりますな。奇妙なこともあるものです」

「ならば、サッサと解決してみせろ。我々の手を煩わせるな」

「言われずともっ! 〈火行衆〉にはその力がございます! すべてを屠る圧倒的な火力が。しかし、それをさせないのは、おりん様、他ならぬあなたでは」




 「そこまでにしろ、夜幻(やげん)




 声が。あれ、どこから?

 きょろきょろ。


「会議への出席が遅れてしまいました。そして我が愚弟(ぐてい)の、たび重なる無礼な発言と併せて、深くお詫びいたします。まことに……申し訳ございませんでした」



 ま、まぶしっ、光がまともにぃ! 目が、目がぁぁぁ。

 ……ふう、危なかった。

 低姿勢で助かりました。

 いきなり『いけめん』は困りますな。

 なんですか、このうす暗い場に似合わない、

 あなたの圧倒的な『きらきら・おーら』はっ。 



「兄者、戻っておられたのですか」

「まずは、おりん様に詫びるのだ夜幻(やげん)。お前の発言は、あまりにも幼稚、そして見当違い。おりん様――我ら〈火行衆〉は、おりん様の忠実なる部下です。そこに間違いは決してございません。どうか、この愚かな弟をお許しください」

「くっ……申し訳ございませんでした……!」



 深々と頭を下げる『いけめん』ふたり。

 確かそちらは、陽幻(ひげん)殿でしたか。

 その美しい炎朱色の体毛は“羽”ですな。

 全身が輝いて、あの不可思議な

 圧倒的『きらきら・おーら』となっているようです。



 《鳥人(うぃめん)》という

 巨大な両翼を持つ“大空の征服者”がおりますが

 この『いけめん』兄弟まさにそれ。

 攻撃不可能な遥かな高みから吹きかけられる猛火は

 冒険者にとって悪夢。



「もうよい。気にしてない。私も言い方が悪かった」

「ありがとうございます、おりん様。今後は、このようなことが一切ないように厳しく指導してまいります」



 なかなか『じぇんとるめん』ですなあ。

 今どき珍しい好青年。

 弟のとんがり(すべてを傷つけてしまいそうな)感が

 まったくありません。



「それで兄者、“あちら”のご返答はいかがでしたか?」

「うむ」



 すると兄の陽幻(ひげん)、おりん様の近くに寄ってすっと膝を折り、

 静かに頭を垂れます。



「このたび【無人のムの野】支店の“ヴェロン支店長”から、快いご返答をいただきました。おりん様にご報告申し上げます」

 ヴェロン――と……まずいっ。『かたかな』になっちゃうよっ!!





「【無人のムの野】支店は、我が【迷いのマの森】支店に、惜しみない“協力”と“ご支援”を確約するそうです」




 うぉおおおおおおおおお。


 あちこちで上がる歓声。

 さっと椅子から立ち上がり、社員の誰もが私の周りで

 歓喜の抱擁を交わしております。

 『べろん(やむを得ず。ひらがな表記では限界が)』支店長を私、

 誤解しておりました。

 皮肉屋さんとばかり思っていましたが、とても親切な方なのですねえ。




 なんとなく、それに私も加わりたいけど、

 おりんちゃんの顔がなぜか晴れません。



「陽幻、それは独断行動なのか……?」



 足元の『いけめん』、じっと黙しておりますな。

 おりんちゃん、すると激昂いたします。


「お前ら……この陽幻の行動を知っていたのか……この私は、しかし、この【迷いのマの森】支店を“任される私”はッ! それについて、一ッ切関知しておらぬ! どうなのだ陽幻ッ、忠実な部下とさっき申したお前が、どうして私の判断を仰がずにコソコソと、まるで盗っ人のように行動する! “あのようなヤツ”に……よりによって“あのヴェロン”などに助けを請うなど私は絶対にッ」

「それが我らの総意なのだ、おりん」




  奥の暗がりから現れる、四つの影。




「お……お……〈衆長(おさ)〉たちだっ!」




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