level.37 よめ(?) は おどろいている!?
しーん。
な、なぜ……しーん……
『ふぉろー』がどこからも聞こえてきません。
「我々は、あなた方『狐一族』にとって付属品に過ぎないのではありませんか?」
ごっほごほ。
あまりの空気の重さに、ごーっほごほっ、いつもの持病がぁっ!
やっぱり《猫男》、あんたはえらいっ。
お願いだから親友ぅ、頼むから戻って来てくれぇ!
私の『こおりみず』はまだ少し冷えてるぞっ。
「今回の事件も〈金行衆〉だけで、すべて片づけられたそうですね。なぜ、第一層で起きたのにも関わらず、現場を任されるはずの我らが、蚊帳の外に置かれねばならないのか」
「蚊帳の外に置いたつもりはない」
「左様ですか。しかし、狐に妨害されたと若い衆が申しておりましたので。なるほど。食い違っておりますな。奇妙なこともあるものです」
「ならば、サッサと解決してみせろ。我々の手を煩わせるな」
「言われずともっ! 〈火行衆〉にはその力がございます! すべてを屠る圧倒的な火力が。しかし、それをさせないのは、おりん様、他ならぬあなたでは」
「そこまでにしろ、夜幻」
声が。あれ、どこから?
きょろきょろ。
「会議への出席が遅れてしまいました。そして我が愚弟の、たび重なる無礼な発言と併せて、深くお詫びいたします。まことに……申し訳ございませんでした」
ま、まぶしっ、光がまともにぃ! 目が、目がぁぁぁ。
……ふう、危なかった。
低姿勢で助かりました。
いきなり『いけめん』は困りますな。
なんですか、このうす暗い場に似合わない、
あなたの圧倒的な『きらきら・おーら』はっ。
「兄者、戻っておられたのですか」
「まずは、おりん様に詫びるのだ夜幻。お前の発言は、あまりにも幼稚、そして見当違い。おりん様――我ら〈火行衆〉は、おりん様の忠実なる部下です。そこに間違いは決してございません。どうか、この愚かな弟をお許しください」
「くっ……申し訳ございませんでした……!」
深々と頭を下げる『いけめん』ふたり。
確かそちらは、陽幻殿でしたか。
その美しい炎朱色の体毛は“羽”ですな。
全身が輝いて、あの不可思議な
圧倒的『きらきら・おーら』となっているようです。
《鳥人》という
巨大な両翼を持つ“大空の征服者”がおりますが
この『いけめん』兄弟まさにそれ。
攻撃不可能な遥かな高みから吹きかけられる猛火は
冒険者にとって悪夢。
「もうよい。気にしてない。私も言い方が悪かった」
「ありがとうございます、おりん様。今後は、このようなことが一切ないように厳しく指導してまいります」
なかなか『じぇんとるめん』ですなあ。
今どき珍しい好青年。
弟のとんがり(すべてを傷つけてしまいそうな)感が
まったくありません。
「それで兄者、“あちら”のご返答はいかがでしたか?」
「うむ」
すると兄の陽幻、おりん様の近くに寄ってすっと膝を折り、
静かに頭を垂れます。
「このたび【無人のムの野】支店の“ヴェロン支店長”から、快いご返答をいただきました。おりん様にご報告申し上げます」
ヴェロン――と……まずいっ。『かたかな』になっちゃうよっ!!
「【無人のムの野】支店は、我が【迷いのマの森】支店に、惜しみない“協力”と“ご支援”を確約するそうです」
うぉおおおおおおおおお。
あちこちで上がる歓声。
さっと椅子から立ち上がり、社員の誰もが私の周りで
歓喜の抱擁を交わしております。
『べろん(やむを得ず。ひらがな表記では限界が)』支店長を私、
誤解しておりました。
皮肉屋さんとばかり思っていましたが、とても親切な方なのですねえ。
なんとなく、それに私も加わりたいけど、
おりんちゃんの顔がなぜか晴れません。
「陽幻、それは独断行動なのか……?」
足元の『いけめん』、じっと黙しておりますな。
おりんちゃん、すると激昂いたします。
「お前ら……この陽幻の行動を知っていたのか……この私は、しかし、この【迷いのマの森】支店を“任される私”はッ! それについて、一ッ切関知しておらぬ! どうなのだ陽幻ッ、忠実な部下とさっき申したお前が、どうして私の判断を仰がずにコソコソと、まるで盗っ人のように行動する! “あのようなヤツ”に……よりによって“あのヴェロン”などに助けを請うなど私は絶対にッ」
「それが我らの総意なのだ、おりん」
奥の暗がりから現れる、四つの影。
「お……お……〈衆長〉たちだっ!」




