level.2 《???》 が あらわれた!!
〈マのモノ〉は、がんばるモノが大好きです。
ようやく静かになりました。それからのことをお話しましょう。
いやいや私のことなど、どうでもいい~とお思いになるかもしれません。
サッサと先へ進めと、ながら読み(?)をしちゃうぞと、
無言の圧力をビンビン感じております。そりゃ確かに。
私など、ハシにもボーにも幅広のシャモジにさえも引っ掛からない、
というかカスリもしない、ミジメな人生――
いえ、私は〈マのモノ〉ですから寿命など最初からありません。
そういう設定。そういった仕様にございます。
「なぜ」や「どうして」は聞いてはいけない、お約束(←大事)。
ヒカリモノに倒されて初めて、我らは深い眠りに就くのです。
ははあ、と思わず唸った皆々サマ。こんな私が羨ましいでしょうか?
試験もなんにもありゃしません。それにオナカも減りません。
当然ダイエットする必要もなく、
「お前はあの頃と変わってないなあ、俺なんか、こうだぜ」
と腹をつまんで自嘲気味に相手を皮肉る必要もございません。
〈ニンゲン〉と違って、毎日ウハウハですな。
とんと騒いで寝るだけですけど。
それなりに楽しい〈マのモノ〉ライフ。
自分で言うのもアレですが、戦闘スキルはありません。
そういったニクショク系ではないのですな。
うす暗い部屋でカタカタ寂しくやるような、オフィスワークが専門です。
最近は〈新悪代官サマ〉をお迎えするための準備に大忙しだったワケで。
その他に仕事と申しますれば、おもしろおかしく我らが暮らす、
この【地獄の城塞】の気のイイ〈マのモノ〉の不満を『↑』に報告したり、
または『↑』の指示を『↓』にやったり、
ヤツらのストレス解消に付き合ったり、
はたまたサルトン博士のお手伝いをしたり……。
まあこうして、あっちこっちを行ったり来たりで、
“ホネ”を折るワケですな。
アイタタタ。このくらいで済んでサイアクです。
命を落とさなかっただけアンラッキー。
ヒカリモノに出会った時は、もう『超』サイコー。
そしてそのまま天に召されたいい、なんつって。
……調子に乗り過ぎました。
取り乱して申しワケございません。
話を聞いてくれるヒトが、いえ〈マのモノ〉が、
ただの一匹も傍におらんのでございます。と、グチグチ。
ささッ、話を“メイン”に戻しましょう!
さてさて……とは言ったものの、どこに戻してよいものか。
不思議と真っ暗でございます。
なるほど。
徐々に、ジョジョーに蘇ってまいります。
悪夢が。思い出したくもない、あの悪夢が。
サルトン博士の手違いで生まれちゃった、
あの紫色の《???(巨大粘液)》に遭遇したところで
ブラックアウトしたワケですな。
なんと果敢にも私は、
ヤツと一戦おっ始めてしまったのでしたなあ。
そりゃムボー。身の程知らずは、まさにコレ。
ゴロゴロピシャーン、と稲妻の呪文が使えるならサクッと解決でしたが。
ザンネン。
話しはようやく、そこからリ・スタートです!
『 たたかう 』
|=| 『 しぬき で にげちゃう 』
「ハナシが……いや、設定が完全に崩壊しとるッ」
こちらの状況などお構いなし。
完全に閉め切られた【サルトン実験室】のドアの向こう側から
歓喜に沸く〈マのモノ〉たちの楽しげな声がしております。
「〈新悪代官サマ〉のォ、おなァーーりーーー」
こんな時に……な、なんてイマイマしいんだ……。
「……お許しくださいサルトン博士――博士が残した“ミッション”は、とても遂行できそうにありません。だって私には、まだ幼いムスコが居りまして、それからツマもムスメもハハオヤもォ」
と、知らない間になんとなんとォ~!
天井まで達しちゃったグレープ味の伸びるアイス……
じゃなくて紫色の《???》は私の話なんぞ聞く耳持たず、
飛沫をピシャピシャ勢いよく上げながら
私めがけバッシャャーーン!!!!と、
想像以上の迫力で殺到いたします。
「うひゃあ」
右、左、ななめよこ!
そこから真上にジャンプしまして、さらに右、左、ななめよこッ!
サンカクボタンにシカクボタン。気分は強制スクロール。
こうなれば反射神経でピコッピコッ。
グッと押さなければストーリーが前に進まない、お約束のアレですな。
いやはや、絶望的とも思える容赦のなさ。
鬼でございます。序盤からこれでは持ちません。
まったく“光”が見え……いえ、“光”が見えてはいけませんな。
なぜならば――
我ら〈マのモノ〉にとって
『 選ばれし〈ニンゲン〉たちで構成されたエリート狩り集団 』
〈光のモノ〉は、我が社創業以来のオジャマモノ!
いわば迷惑過ぎる個人事業主。
さらには憎ッくき親のカタキにございますッ!!!!!!
〈ニンゲン〉どものスーパースター、〈光のモノ〉――
ヤツらの出現をコッソリ知らせる秘密のコードは
たったの五文字で『ヒカリモノ』。
姿をどこかで見かけたら、各支店ですぐ『ヒカリモノ』。
遥かなる死闘の歴史で洗練されたホウレンソウ(報告・連絡・相談)を
駆使し、位置情報をリアルタイムに共有して
すかさず「デアエデアエ!」でございます。
「メチャクチャな。これでは話も通じませんな」
というか、どこにもヤツの耳がないことに気付きますな。
我が社の心臓部である【サルトン実験室】を半壊させた
紫色の《???(巨大粘液)》、まったく悪びれる様子もなく
少しずつ、少しずつゆっくりと盛り上がって
次なる攻撃対象を探し始めます。
「……なるほど低能なヤツですな。自分がなんのために生まれたのか、まったく分かってらっしゃらない。生まれながら我ら〈マのモノ〉は、その崇高なる信念に、ズンズン痛いくらいに突き動かされて、こんなに楽しく生きているというのに」
と、《???》の動きが止まります。
少しずつ、少しずつ私の背丈ほどに縮んだあとで、微動だにしません。
やっぱり耳があったんだ。
きっとそうだ! そうに違いありません!
ギョギョ! デッカイ目がヤツの中央に生まれた!
「おまえは」
しゃべッたッ!
明確なカタチを持たなかった紫色の《???》。
耳も目も口も次々に生まれて、やがてヒト型に変化いたします。
「オレを造ったのは、おまえか?」
相対する紫色の《???》、やがて私ソックリに容姿を変えます。
なんと珍妙なスキル。
目の前に現れた紫色の自分……キモチワルイ!
「オレは、だれだ? どうして、ここに居る?」
「あなたはサルトン博士によって造り出された、新種の〈マのモノ〉です」
「さるとん……?」
「喜びなさい、この世界に生まれたことを。いざ、〈新悪代官サマ〉が降臨なさる奇跡の瞬間に立ち会うのです! きっと崇高なる我らの信念も思い出すことでしょう。さあさあさあッ」