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悪代官サマ と ユカイな仲マたち  作者: 中田 春
【 地獄の城塞 】序編
3/82

level.2 《???》 が あらわれた!!

〈マのモノ〉は、がんばるモノが大好きです。

 ようやく静かになりました。それからのことをお話しましょう。



 いやいや私のことなど、どうでもいい~とお思いになるかもしれません。

 サッサと先へ進めと、ながら読み(?)をしちゃうぞと、

 無言の圧力をビンビン感じております。そりゃ確かに。



 私など、ハシにもボーにも幅広のシャモジにさえも引っ掛からない、

 というかカスリもしない、ミジメな人生――

 いえ、私は〈マのモノ〉ですから寿命など最初からありません。

 そういう設定。そういった仕様にございます。

 「なぜ」や「どうして」は聞いてはいけない、お約束(←大事)。

 ヒカリモノに倒されて初めて、我らは深い眠りに就くのです。


 ははあ、と思わず唸った皆々サマ。こんな私が羨ましいでしょうか?

 試験もなんにもありゃしません。それにオナカも減りません。

 当然ダイエットする必要もなく、

 「お前はあの頃と変わってないなあ、俺なんか、こうだぜ」

 と腹をつまんで自嘲気味に相手を皮肉る必要もございません。



 〈ニンゲン〉と違って、毎日ウハウハですな。

 とんと騒いで寝るだけですけど。

 それなりに楽しい〈マのモノ〉ライフ。



 自分で言うのもアレですが、戦闘スキルはありません。

 そういったニクショク系ではないのですな。

 うす暗い部屋でカタカタ寂しくやるような、オフィスワークが専門です。


 最近は〈新悪代官サマ〉をお迎えするための準備に大忙しだったワケで。

 その他に仕事と申しますれば、おもしろおかしく我らが暮らす、

 この【地獄の城塞】の気のイイ〈マのモノ〉の不満を『↑』に報告したり、

 または『↑』の指示を『↓』にやったり、

 ヤツらのストレス解消に付き合ったり、

 はたまたサルトン博士のお手伝いをしたり……。



 まあこうして、あっちこっちを行ったり来たりで、

 “ホネ”を折るワケですな。

 アイタタタ。このくらいで済んでサイアクです。

 命を落とさなかっただけアンラッキー。

 ヒカリモノに出会った時は、もう『超』サイコー。

 そしてそのまま天に召されたいい、なんつって。



 ……調子に乗り過ぎました。

 取り乱して申しワケございません。

 話を聞いてくれるヒトが、いえ〈マのモノ〉が、

 ただの一匹も傍におらんのでございます。と、グチグチ。



 ささッ、話を“メイン”に戻しましょう!



 さてさて……とは言ったものの、どこに戻してよいものか。

 不思議と真っ暗でございます。

 なるほど。

 徐々に、ジョジョーに蘇ってまいります。

 悪夢が。思い出したくもない、あの悪夢が。

 

 サルトン博士の手違いで生まれちゃった、

 あの紫色の《???(巨大粘液)》に遭遇したところで

 ブラックアウトしたワケですな。



 なんと果敢にも私は、

 ヤツと一戦おっ(ぱじ)めてしまったのでしたなあ。

 そりゃムボー。身の程知らずは、まさにコレ。

 ゴロゴロピシャーン、と稲妻の呪文が使えるならサクッと解決でしたが。

 

 ザンネン。


 話しはようやく、そこからリ・スタートです!





    『 たたかう 』

|=| 『 しぬき で にげちゃう 』





 「ハナシが……いや、設定が完全に崩壊しとるッ」



 こちらの状況などお構いなし。

 完全に閉め切られた【サルトン実験室】のドアの向こう側から

 歓喜に沸く〈マのモノ〉たちの楽しげな声がしております。



「〈新悪代官サマ〉のォ、おなァーーりーーー」



 こんな時に……な、なんてイマイマしいんだ……。



「……お許しくださいサルトン博士――博士が残した“ミッション”は、とても遂行できそうにありません。だって私には、まだ幼いムスコが居りまして、それからツマもムスメもハハオヤもォ」



 と、知らない間になんとなんとォ~!

 天井まで達しちゃったグレープ味の伸びるアイス……

 じゃなくて紫色の《???》は私の話なんぞ聞く耳持たず、

 飛沫をピシャピシャ勢いよく上げながら

 私めがけバッシャャーーン!!!!と、

 想像以上の迫力で殺到いたします。



「うひゃあ」



 右、左、ななめよこ! 

 そこから真上にジャンプしまして、さらに右、左、ななめよこッ! 

 サンカクボタンにシカクボタン。気分は強制スクロール。

 こうなれば反射神経でピコッピコッ。

 グッと押さなければストーリーが前に進まない、お約束のアレですな。

 いやはや、絶望的とも思える容赦のなさ。

 鬼でございます。序盤からこれでは持ちません。



 まったく“光”が見え……いえ、“光”が見えてはいけませんな。



 なぜならば――


 我ら〈マのモノ〉にとって


 『 選ばれし〈ニンゲン〉たちで構成されたエリート狩り集団 』

 

 〈光のモノ〉は、我が社創業以来のオジャマモノ! 

 いわば迷惑過ぎる個人事業主。

 さらには憎ッくき親のカタキにございますッ!!!!!!



 〈ニンゲン〉どものスーパースター、〈光のモノ〉――

 ヤツらの出現をコッソリ知らせる秘密のコードは

 たったの五文字で『ヒカリモノ』。

 姿をどこかで見かけたら、各支店ですぐ『ヒカリモノ』。

 遥かなる死闘の歴史で洗練されたホウレンソウ(報告・連絡・相談)を

 駆使し、位置情報をリアルタイムに共有して

 すかさず「デアエデアエ!」でございます。



「メチャクチャな。これでは話も通じませんな」



 というか、どこにもヤツの耳がないことに気付きますな。


 我が社の心臓部である【サルトン実験室】を半壊させた

 紫色の《???(巨大粘液)》、まったく悪びれる様子もなく

 少しずつ、少しずつゆっくりと盛り上がって

 次なる攻撃対象を探し始めます。



「……なるほど低能なヤツですな。自分がなんのために生まれたのか、まったく分かってらっしゃらない。生まれながら我ら〈マのモノ〉は、その崇高なる信念に、ズンズン痛いくらいに突き動かされて、こんなに楽しく生きているというのに」



 と、《???》の動きが止まります。

 少しずつ、少しずつ私の背丈ほどに縮んだあとで、微動だにしません。

 やっぱり耳があったんだ。

 きっとそうだ! そうに違いありません!


 ギョギョ! デッカイ目がヤツの中央に生まれた!


「おまえは」


 しゃべッたッ!



 明確なカタチを持たなかった紫色の《???》。

 耳も目も口も次々に生まれて、やがてヒト型に変化いたします。


「オレを造ったのは、おまえか?」


 相対する紫色の《???》、やがて私ソックリに容姿を変えます。

 なんと珍妙なスキル。

 目の前に現れた紫色の自分……キモチワルイ!



「オレは、だれだ? どうして、ここに居る?」

「あなたはサルトン博士によって造り出された、新種の〈マのモノ〉です」

「さるとん……?」



「喜びなさい、この世界に生まれたことを。いざ、〈新悪代官サマ〉が降臨なさる奇跡の瞬間に立ち会うのです! きっと崇高なる我らの信念も思い出すことでしょう。さあさあさあッ」



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