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悪代官サマ と ユカイな仲マたち  作者: 中田 春
【 迷いのマの森 】 編
28/82

level.27 ようかい ぐんだん が あらわれた!! 

【迷いのマの森】編 すたーと です!!!!!

 

  よめ(?)が とうじょう するよ♪



 どろどろどろどろどろどろどろどろ。

 


 ひゅぅひゅぅ、ひゅぅぅぅぅ~。



 なぜ、すべて『ひらがな』入力……なんとも不思議、かな。

 それらしい雰囲気を醸すため、『かたかな』は使用いたしません。

 これが今回の“お約束”にございます。



「こわくなーい、こわくない。私はなーにも、こわくなーい」



 辺りは緑が鬱蒼と茂る『じゃんぐる』地帯……。


 “ではなくて”、人跡未踏の密林地帯。

 さらには高温多湿、付け加えるなら不快度指数は『まっくす』……。


 “ではなくて”、記録的な数字を叩き出しております。

 足元は始終ぬかるみ、歩行もままならぬ状況。

 やはり疲労は『ぴーく』――とは申しません。

 乳酸がこれ以上ないくらいに溜まっております。




 不自由ですな。

 しかし、これが私の選んだ道。

 『かたかな』は意地でも使いません。





 ざんざんざざん、ざざざざざざざざ。




「はっ。誰かの気配……?」


 ざざっざざっざざっ。


「う、うしろっ?」


 びゅうびゅう、びゅゅゅ~う。


「風……でしたか、ですよねぇ! だって私の他に、ここには誰も……」





   誰もいないのでございます。





 ざっざっざっ。

 ざっ。ざっ。ざっざっざっ。

 ざっざっざっざっざっざっ、ざざざざざざざざざざざざ!!!!!!


「いやあ近い近い! 音が近いっ! ぎゃああああ」


 と、その時――深い木々の間から飛び出す、真っ白い“なにか”!



 にゅるるっと《大首(びっくびー)》。



「やあああああ。もう、やあああああ」



 逃げ出す私。

 しかし白くて長い首をさらに伸ばして、

 にゅるにゅると気持ちの悪い動作で私を執拗に追う

 《大首(びっくびー)》。その首の下は一体どこ?



「はあはあはあ。ここまで来れば……むむっ!」



 じろりっ。

 “ぞくぞくぅ”~。

 なんと私の後ろには恐ろしい《山姥(ぐらんば)》が。

 研ぎ澄まされた鋭利な刃物を握りしめ、小柄な老婆は無言で

 私の後ろに立っておりました……。



「ひいいいいい。《山姥(ぐらんば)》だーーー! 出たぁーーーー!」



 すると声を聞きつけた《大首》、すたこら逃げる私を見つけます。

 にょきりと角をおっ立てる《山姥》に続いて

 にゅーるにゅると、伸びる伸び~る《大首》。



「あ、あれは」

 明かりです!


 やったぁ、場違いなほどに照りつける街灯を発見しましたぞっ! 



 でも、どうしてこんな場所にぽつりと街灯が……?

 いやいやいや、今はそんなのどうでもいいっ! 

 本社から不眠不休で歩き続けて、はや“五日”。

 なんと本日で“六日目”を迎えます。とにかく足が『ぎぶあっぷ』……

 じゃなくて悲鳴を上げておりますので、とにかく休憩したい。



「ああよかった。おや? こりゃ失礼。先客がおりましたか。ふう、ここは化け物だらけでございますねえ。同じ〈まのもの〉とは思えない、あのおどろおどろしさ……では私も、ちょっと休ませていただきますよっと」


「へえっ」


 その〈まのもの〉、背を向けたまま、

 ちょこんと街灯の下で膝を折ってじいと一点を。



「いやあ実は私、本社からここまで歩いてまいりまして」

「へえっ」



 こちらを見向きもしません。



「へえっ」

「……あのう、ところであなたは……?」

「へえっ。遠いところから、へえっ。ようこそ旦那、お初にお目にかかります。通りかかる者を、ひたすら黙って待ち続けるあっしは、こういう〈まのもの〉でござんす、へえっ!」



 あれえ? 

 おかしいですね。目の錯覚でしょうか? 

 すごく大きなその巨体。

 はて、いつの間に……?



「へえっ。へっ、へっ、へえっ!!」



 さらに際限なく膨張していく巨体。


「あ、あなたっ! どこまで大きくなるのですか……は、破裂しそうじゃないですか! あぶっ、危なぁ! いきなり勝手は困りますぞっ」


 膨らみ続ける風船のように

 ひたすら“巨大化”――いえ“肥満化”の一途を

 その『ま』は辿り続けます。

 ぶくぶくぶく。

 もうやめてっ! 



「ひゃひゃひゃひゃ」



 なんと“街灯だった物”が、楽しそうに上で笑います。

 提灯が破けた箇所のあちこちから、ちろちろと火が噴かれます。

 そうか……

 これが《化提灯(ばけらったん)》……。



「うひゃひゃひゃ」

「旦那ぁ、こんなに膨らんでしまいやんした。うぷっ、もう吸い込めない」


 大気を取り込んで可燃性の瓦斯(がす)を体内で発生させて

 最大化した《木偶棒(でくのぼー)》。口を開くたび、

 びゅうびゅう吹きかけられる、くっさい吐息がたまらない。



「おっと《化提灯》の旦那ぁ、あんまりお近付きになると、いけやせんぜ。あっしも旦那方も向こうへ行ってしまいやんす。どうかそれ以上はへえ!」

「うひゃひゃひゃひゃ」



 笑いごとではありません。

 提灯の破れた箇所から催促するように、ちろちろと噴かれる火。

 その向こうへ行ってしまう前に、どこかへ自分が行きましょう。



 かんかんかん。

 かん、かん。



 やがて古ぼけた建物が見えてまいります。



 かんかんかん。かん、かん。

 ――がちっ!



 聞こえてくるのは、“固いなにか”を打ち付ける音。

 家……には見えません。それは儀式を行う祭壇のような?



 がん、がん、がん、がん。

 がちっ! 



 いやな予感。もはや何度目でしょうか。



「もぉーーーーー」



 今……なにか言いました? ええ聞こえました間違いなく。



「もぉーーーーー」



 やっぱり出ましたな。

 実は、そろそろだと思っておりました。

 只今の時刻は草木も眠りこける丑三つ時、

 《丑之刻舞利(だんしんぐ・ないともー)》が踊っています。

 


 両手に持つ火打ち石を、がんがん、がんがん鳴らしながら、

 古い祭壇の前で、きゃつは、のりのりで踊っておりますぞっ!



「もぉーーーーー」



 ある意味恐い。

 無害なのですが長居は無用。すたこら逃げる私です。

 その間に、闇がさらに深くなってまいります。

 『第四の大陸』は、ただでさえ太陽が当たらないというのに、

 本社から南西方向に位置する【迷いのまの森】は気味の悪い樹木が

 一面を覆い尽くしておりますので。




「え?」


 と! 

 ととっ、おっとっと。

 


 後方確認、よし。化け物なし。

 では『ばっく』いたしますぅ~。



 “あれ”は……な……おおっ!



「あれは『黄金大甲虫(ごーるでんおおかぶと)』っ」



 私、こう見えて昆虫が大好きです。

 あの幻の甲虫は【迷いのまの森】でしか見ることができない

 『まにあ』垂涎の希少昆虫。

 そりゃもう、輝く宝石のように煌めいております!



 あの揺るぎない王者の風格。

 見間違えるはずありません。さっそく採集採集!



「うわぁ……本物ですぅ……さるとん博士に自慢しよ」



 と、目の前の大木が突然ぐらぐら。

 すると落ちてくるのは大量の『黄金大甲虫』。



「うひゃあ、ひゃあ! これぞ“宝”の山、まったく信じられません! うしゃしゃ採集採集っ! うひょひょひょ~。さるとん博士に売りつけよっ」



 と、大木と不意に“目”が合います。



「おらに食わせろ」



 飢えた獣のように鋭い眼光を放つ、それは【迷いのまの森】支店の名物社員

 《食人木(はんぐりーぼっくり)》。



「く、く、食わせろっ。なんでもいいから、おらに食わせろっ」

「なにをっ! ぜったい食わせるものかっ、この『黄金大甲虫』は誰にも絶対に渡しませんぞっ!」



 と、予想外に《食人木》は口を広げて私をがぶり。

 そうだった……頭に血が昇っておりました。

 これは当然の結果にございます。

 いくら強がったところで私は草食系。

 “おらおら”の肉食系にはかないません。



 次第に『ぶらっくあうと』していく自分。

 たかが昆虫を守り、深い眠りに就く自分。

 欲張ると、ろくな目に遭いませんな。





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