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悪代官サマ と ユカイな仲マたち  作者: 中田 春
【 アンゾルゴンのア大灯台 】 編
23/82

level.22  〈りとる・うぃっち〉 は みてしまった。



「強い、なんて強さなんだ……この〈魔物〉……」



 いきなり正念場でした!

 最上階マイナス・イチ――

 ここは【アンゾルゴンのア大灯台】支店の二十九階

 【支店長の間】にございます。



「おう、ポチ。えらい遅かったのう。もう終わりそうやぞ」

「完全に寝坊しました! まことに申しワケございません!」

「別にエエ。おまんは、それだけの仕事をした」



 あの若いヒカリモノ、私が到着した時には虫の息にございました。



 矢尽き、刀折れ、

 身に着ける《皮の鎧》は無残に引き裂かれております。



「どうしても、君を助けたかった」



 その純真無垢な視線の先には、

 “ナイス人型長身バディ”に恐れ多くも大変身したままの

 あの紫色の《???》が。



「最後に……君の名前を、オイラに教えてくれないか……?」



 ピュアですな。イイハナシにございます。


「我、我の、名前?」



 ど、どうした《???》! 

 別にお前までピュアになることはないのですぞッ!



「そう……君は……咲き誇る美しい君は、誰なんだ……?」

「我は、我に名前など、あるものか」

「名前が……ない?」

「“ない”ものは、“ない”。それは“必要がない”」

「そんなこと、ない。“必要ない”ことは、この世界に存在しないんだ……じゃあ君は、どうしてオイラの前に現れたんだ……どうして君と、オイラは出会ってしまったんだ……?」


 ハイそこまで。ストップ・ザ・ワールド。



「オイラたちの、この出会いは……無意味なのか……?」



 お口にチャックしませんな。

 しょうがない。





 たった今、なんの前触れもなく今になって“パッ”と閃いたような、

 このチート的な『超』ヒキョー・スキル――実は使いたくありません! 


 しかし、しかァし!

 私の〈仲マ〉が未曾有の危機的状況に陥っている今、ここで使わずいつ使う?

 今でしょ。



 さあ、これが私のニュースキル――

  『コントロール・S』発動だあッ!  




「どうして……どうして……」


「どうしてもこうしても、ありませんぞ。そういうのは、ご自分の賢い頭の中だけに、コッソリとどめておいてください。勝手に出力されては困ります。ルバロバ殿、もうひとりのヒカリモノは来店しているのですか?」

「え……“先生”が、ここに……?」


 たくましく盛り上がった肩のキンニクを、コリコリとルバロバ殿は鳴らします。


「おまんはエサじゃ。ただの弱いエサじゃ。本当のオイの狙いは、そっちの“オセッカイなヒカリモノ”じゃけんのォ。勝手に教育的指導されたら困るんじゃ。ちょうど、今のおまんみたいに」

「そんな“先生”……こんなオイラのために……」



 ガハハハハ。

 ゲスに笑う私とルバロバ殿。

 悪役がピッタリ板に付いてきましたぞ。



「必要ないことは、この世界に存在しな、い?」



 ムムムッ。眉間ピクピク。


「どうして我には、我には名前が――」

「ハイ、混乱しましたね。でしょうね。こういうのがあるから困るんですよ、そちらの若いヒカリモノさん。ウチは、そういう店じゃないんです。ねえ支店長?」

「そうじゃ。勝手におさわり禁止じゃ」

「……わ、我は我はッ!」

「おうポチ、どうするんじゃ。崩壊しよるぞ、あのケッタイな《スライム》。まあこれを機に、本社のサルトンによう言うとくんじゃな。ヘタに脳ミソをイジくると、ああなるぞって。中途半端がイチバンよくないんじゃ、まったく」

「既に手を打ちました。あらゆる『設定』は今、“完全に私のコントロール下”にあります」

「あとは“書き換える”だけ、っちゅうヤツか。そっちは便利な能力じゃのう。なんでも思い通りになるんか?」

「私は、あと押しするだけ。それにコレは、覚えたてホヤホヤのニュースキル。発動したのは、今回が初めてにございます」

「まあエエ。しかし、ホンマにケッタイな《スライム》じゃ。知らなくてもエエことがある、それが分からんヤツはアホじゃ。賢いようでズレちょる。知るアホ、余計な混乱を産む、じゃ」



 と、視線を感じます……。



 「どういうこと」

 


 そこに居たのは《リトル・ウィッチ》。

 自分の存在が、こちらもちょっと気になる女の子にござい。



 「ポチサマは、ナニモノなの?」



 まさに状況は、第二秘書は聞いちゃった状態。



 「混乱するとか、知らない方がエエって、なに?」


 ルバロバ殿が余計なことを口走るから。




「――はあ。困りましたな《リトル・ウィッチ》殿。ルバロバ殿が申すように、知らない方がエエこともあるんですよ」

「なにそれ、意味分かんない」 

「それでよいのです。今のあなたの感覚は、とても正しい。そういうのはシャットアウト、可能な限り拒否してください」

「ダメ、だ……それは間違っている……」




 虫の息のヒカリモノ、息も絶え絶えに、実に余計なことを口走りますな。

「君は……君も……本当は気付いているんだろ? だってオイラたちは」




 おやすみなさい、あなたは永遠にねッ!


「ぐあッ」






 静かになりました。






「教えてポチサマ。アタイ――ううん、アタイだけじゃない。どうしてアタイたちは、“この世界に生まれて”――」


「シャラァァァァップ(訳:オダマリなさい)!!!!!!!!」






 静まりますな。

 たくさん声を出しましたから。


「あなたも、やっぱり急いでいるようですね」

「急ぐ? それは、考えてはいけないことなの?」


「もっと、もっとあなたがオトナになって、もう少しだけ――あともう少し、あなたの心にゆとりができたら、その問いに挑戦するのもいいでしょう。でも今はダメです。もっともっと、あなたは自分の世界を広げる“必要がある”……と私も“必要がある”と思わず申し上げました。ええ、確かに“必要はある”んですけど、でも“必要はなくてもイイ”んですよ」



 《リトル・ウィッチ》の上で輝く、たくさんの『?』マーク。

 それでオーケイ。バッチグウ。



「時が来れば分かります。今は、今だけで結構です。となりを歩いてくれますか? 共に、その問いに私と徐々に挑戦していきましょう」





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