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悪代官サマ と ユカイな仲マたち  作者: 中田 春
【 アンゾルゴンのア大灯台 】 編
20/82

level.19 【ふもとの村】.にいっ。



 厳重に封をされた【ふもとの村】が、我々の前にようやく開かれます。

 ドキドキ。



「先生、ここは“オイラ”に任せてください」

「年寄り扱いするな“セト”。お前こそ下がっておれ。夜の戦闘は違うぞ」

「それでも病み上がりの先生よりは“オイラ”の方がよっぽど働けます」

「フッ、生意気を言うようになった。頼もしいぞ、“我が弟子”よ」



 剣や弓など、武器をそれぞれ手にした大勢の〈ニンゲン〉どもの中で、

 集団の先頭に立つあの二人だけ、明らかに“オーラ”が違っております。



 特に“向こうの年老いた男”から発せられる

 あの神々しいほどの善なる波動は、

 遠く離れたこちらにまでビンビン響いてきます。



 あれが〈ニンゲン〉どものエース・〈光のモノ〉……。



「あれは……お、女の子……? どうして、あんな場所に若い女の子が?」

「そこの娘。お前はなぜ、こんな夜更けに外に居る。理由を明確に答えよ」

「先生、なにをしてるんですか! はやく、はやくあの女の子を村の中へ!グズグズしていると〈魔物〉に襲われてしまいますよ!」

「落ち着け、セト」



 決して怪しまれないように、向こうの警戒を解いてくださいよぉ。

 信じています、私の大事な〈仲マ〉たち。




 「わ――我は〈ニンゲン〉であるッ!」




 細っこい腰に手を当てて“ナイス人型長身バディ”に大変身した

 紫色の《???》の後ろで、絶対唯一無二である……“はずの”

 我が主――〈新悪代官サマ〉になりきる《リトル・ウィッチ》が語ります。



 しーん。



「それで次は次は……っと。我は、そして助けを求めるモノでもあるッ!」



 しーん(※実際にはありません)。



「ちょっとポチサマーー! ハナシが違うって! 無反応なんだけどォ!」


 大丈夫。大丈夫ですぞ、お二方。

 ここまでは想定の範囲内。

 ツギツギ! ゼッタイに“次のセリフ”で釣り上げるッ!



「それから……それから……ええと……ねえ“コレ”、ホントに言うの?」



 アタリマエ。はやく言え。


「か」


 ほら、ほんのり頬をもうちょっと赤らめて。

 そうですそうです!

 先ほどまでのタカビシャなイメージをブチ壊して、

 ホントの私は、なんちゃって清純派――これぞ偉大なるギャップ大作戦!

 イエイ、バッチリ!


「か、かっ」


 さあ、確実に仕留めるのですぞ。





  「彼氏募集中……です」





 ナイス。

「うぉぉぉーっ! すぐに助けに行くッ!」

「待てセト。ヤツは怪し過ぎる、人間に化けた〈魔物〉かもしれん。コラ待て!」



 釣れた釣れた。バカですな。


「ポチィさん、今です!」

「ハイ待ってましたァ、コノミさん!」



 後ろポケットから、素早く私が取り出しますのは、

 あの偉大なる悪才――〈マのモノ〉製造の権威である

 サルトン博士の大失敗からヒントを得て

 私が【サルトン実験室】にてコソコソこっそり制作しました

 戦闘補助アイテム、『増殖☆フォーエバー』にございます。



 すっかり発情しちゃったあの若いヒカリモノ、もうそりゃ怖いぐらいに

 《リトル・ウィッチ》と紫色の《???》めがけて爆走ッ!




 その容貌たるや、まさに“鬼”。

 〝鬼”の形相で彼は迫ります。

 感情を表に出さない《???》も、驚きのこの表情。

 あまりの恐ろしさに《リトルウィッチ》が横で大泣き。



「い、い、イヤーッ!  ヤダヤダヤダーッ! ヘンタイだーーー!」

「これが、コワイ、なのか。興味深い。しかしコワイ」



「こっちですぞ。“鬼”さんこちら、こっちにおいで。はやくはやくゥ!」



 戦闘補助アイテム『増殖☆フォーエバー』をポイッと、

 オトリと“鬼”の間に投じます。


「行くのですぞ、お前たち! その仇は、必ずいつか(誰かが)取るッ!」

 

 

 フラスコに入った『増殖☆フォーエバー』は美しい放物線を描きながら、

 地面に当たって砕けます。

 衝撃によって反応が始まり、

 モクモクと広がる深緑色のジュクジュクしい煙。


「な、なんだ……?」


 とどまるところを知らない深緑色のジュクジュクしい大量の煙は、

 猪突猛進した『若いヒカリモノ』の全身を包んでいきます。



「まさか、毒なのか?」

「ふっふっふ」

「そこのお前は誰だッ」

「ふふふ……アーッハッハッハ! 自重しないヒカリモノ、ざまあミロにございます。さあ今ですぞ、私の元へ来るのだ、そこの〈ニンゲン〉よ!」


 しかし、しーん。

 《???》がもひとつ『?』を浮かべます。

 そうだオマエだ、はやく来いッ。



 広範囲に広がった深緑色の煙幕が次第に晴れていきます。

 


 そして『若いヒカリモノ』の前に現れたのは――



「な、なんて数の《スライム》だ……はやく、その女の子を離せッ!」

「ガハハ、このモノはオレサマが頂いた」

「この卑怯者ッ!」



 心躍る、なんとも素敵な立ち位置ですな。

 そして今だ――《???》が大変身する“ナイス人型長身バディ”に

 こっそり手を伸ばす私。

 しかし『即席マ(がん)』に断固阻止される、

 やっぱりソウショク系の私。



「彼女を返せッ」

「そうかそうか、返して欲しいか?」

「そんなの当たり前だ。お前たち〈魔物〉なんかに渡してたまるか。美しい彼女をどうするつもりだ!」

「ゲヘヘ。さあどうしようかなァ。ご想像にお任せしますゥ」


「な……このゲス野郎ッ! そんなのゼッタイに、ゼッタイに許さないぞ、このヘンタイ! なんてハレンチな」



 オイオイ。

 反応が思ったよりも過敏ですな。



「まさか“触手”とか……出すんじゃないだろうな?」



 その発想はなかった。


「……まあ、とにかく。この彼氏募集中の〈ニンゲン〉を返してほしければ【アンゾルゴンのア大灯台】まで来るがいい。ただし“ひとり”で、だ。お前にその勇気があるのなら」

「行かないでくれ! くそう《スライム》め、弱いくせに数だけ多い!」

「セトーーーーーーッ」

「先生? この渋い声は……先生ですか! 先生、彼女が……あの美しい彼女が……あんなエッチィ〈魔物〉の手にたった今――ええい邪魔だ! 少しでも時間が惜しい、どきたまえ!」



 無限増殖の時間はしっかり稼ぎました。

 会話を楽しんでいたワケではありませんぞ。

 ムダだった時間は、なにひとつございません。


「ポチィさん無事ですか!」

「コノミさん!」

「そちらに乗ってください。《リトル・ウィッチ》さんはこちらへ」


 ベストタイミングで《ホーンダック》の背にまたがるコノミさんが

 場面に颯爽と登場。

 服従のポーズで乗車待ちの《ホーンダック》のツルツルな

 ほんのり桜色の背中めがけ、私も《???》を連れて

 カッコよくダイビング!!!!

 もちろん《リトル・ウィッチ》はコノミさんと一緒。


「直進します。《ジャジャホース》部隊をこの先に展開させています」




 思ったより従順な《ホーンダック》。

 未経験者の私でも、ホレこの通りに自由自在。


「……我の腰を、いつまで触っている気だ、ポチ」



 おっと、これは失礼。不可抗力にございます。

 だから今は、『即席マ(がん)』は向けないで。



「もうサイアク。じゃなくてサイコーだよポチサマ。なにあの〈ニンゲン〉、鼻息荒かった。あの必死さが、これ以上ないくらいサイコー」

「ええ。《リトル・ウィッチ》さんも《???》さんも、今宵は本当にお疲れサマでした。とっても“サイアク”でした、あの演技」

「えーっ、それってどっちの意味? ねえ、コノミさーん」

「ふふ。とても魅力的だったのは間違いありませんよ。ねえポチィさん?」

「そうですね。ヒヤヒヤしました」

「もう疲れたーー」

「ハイあーん。《リトル・ウィッチ》さん、あーん。口を開けてください」

「ワーイ! 大好きな『アメちゃん』だぁ」

「我も……欲しいぞ」



  心を許したモノたちと、夜風を颯爽と切る心地よさ。

   今、私は南の島に居るのでしたな。



 漆黒の夜空に漂流する数多の灯火が

 まるで気の利いたジョークを互いに言い合うように

 キラキラと絶えず揺らめいております。



 そう。ここは南の最前線――

 “天国にイチバン近い島”。なんと痛快な。



「我が支店で独自に開発した回復アイテムは『アメちゃん』だけではありませんよ。『タコヤキ』、『スキヤキ』、『オコノミヤキ』、『スシ』、『テンプーラ』、『フジヤマ』などなど」

「ええーっ。すごい楽しみ!」

「ほう。『フジヤマ』とは、果たしてなんぞや? とても興味深い」

「もちろん、すべてご用意しております。すぐ口にできますよ」



「さすがコノミさん、抜かりありませんな。――さて、これにて“作戦終了”にございます。皆で帰りましょうか」






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