表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪代官サマ と ユカイな仲マたち  作者: 中田 春
【 アンゾルゴンのア大灯台 】 編
17/82

level.16  【アンゾルゴンのア大灯台】 29階の よん。

「なんじゃポチ、居たんか? ダマっちょるから分からんかったぞ」



 な、なぜ、このモノたちは。



「ど、どうしてルバロバ殿は、こんなにも落ち着いていられるのですか! 凄腕の『ヒカリモノ』が、すぐ近くに居るのですぞ! はやく対応策を」

「おまんはホンマに寝てたんか? ついさっきまで、そのハナシをしてたろうが。もうとっくに終わったで」

「通称“マガマガしい悪魔の炎”は、我が社の絶望の灯火なのです! どこぞの『ヒカリモノ』に消させるワケには、ゼッタイにいきません! なにをそんなに悠長に」

「なんじゃ、おまん。なにを慌てちょる。これがオイたちにとっての日常じゃ。慌てることは、なんにもありゃせんし、いつでも挑戦者は大歓迎じゃ。この支店が受け継いできた歴史の、その崇高な精神は、いつまでも変わらんモットーじゃけ。こんなに目立つ巨大看板を、だからずっとオイたちは〈ニンゲン〉どもの『聖地』の真ん前で天高く、誇らしく掲げておるんじゃ」



 ルバロバ殿は、そして申されます。



「誰よりも強くならんといかんのじゃ。ここで暮らす全員が、誰よりも強く。それが【アンゾルゴンのア大灯台】を任されるモノの使命じゃ。おまんも今は、この支店の一員じゃろうが。もっと強くならんかい。ハラくくれェ死ぬ気で戦えェ、来るモノすべて打ち砕けェ」



 とその時、

 たくさんの《フラワーエイブ》が作戦会議室に入ってまいります。



「失礼しますウキッ。偵察部隊の生き残りが、どォーーッしても、支店長に報告したいことがあるッちゅうことで、イッショウケンメイここまで運んできましたウキキッ」



 《フラワーエイブ》がわらわらと、頭のてっぺんの草花を楽しそうに

 揺らしながら、混雑しきった道をウキキと整備中……。



  ――もうしばらくお待ちください――



「着いたで《ホーンダック》、なんか言えや! 眠りに就くんは先やでェ! とっととお勤めせんかい、臨時ボーナス受け取れへんぞ、それ持って故郷に帰るんやろ? しっかりせんかい《ホーンダック》、ほら『アメちゃん』舐めェ! ウキッウキッウキッ」




 ヨロヨロと瀕死の《ホーンダック》が彼らに支えられながら

 ゆっくりと現れます。

 アヒル口の中は『アメちゃん』だらけ。

 回復アイテムの使用方法を間違えている気が……。



「おお、アイツはァ」



 先に報告を済ませていた《ホーンダック》、

 あとから入ってきた傷だらけ、そして体中の羽をむしり取られたように

 桜色の地肌をむき出しにする《ホーンダック》を見て歓声を上げます。



「幼なじみのアイツやん! ようやったフラグ折ったんか! フツウでけへんぞ!」



 ああ例の彼ですか。

 若さゆえのアヤマチを犯したモノですな。


 

 しかしよくも――折れない(はた)をヘシ折りました。

 その(はた)を折る快挙を舞台裏で成し遂げたのは

 恩返しのツルではなくて《ホーンダック》にございます。

 上から覗いてはいけません。



「“け”、“け”、“毛”をォ! これでワイもモテモテにぃ!」



 ツルやない、(まわ)りが少ないだけです。

 彼の名誉のために申し上げておきます。



「すぐ報告するッ! ムダなボケは今、一切必要ありません!」


 ごめんなさいコノミさん。続きをドーゾ。


「申し上げまっせ支店長! 偵察に出ていた《ホーンダック》部隊は壊滅! いや“全滅”、“全滅”にございます! ワイが最後の生き残りですゥ」

「ここにも残っちょる《ホーンダック》を足して、あの“二十で編成した大規模偵察部隊”が、たったの残り二頭か。戦闘は避けられなかったんか?」


「それが同時攻撃を受けまして……」


「どォじコーゲキィ? なんやのソレ? 噂で聞いた、一度に大量の〈マのモノ〉を消失させるっちゅう、恐ろしげな、あの《極大呪文》か?」

「じゃなくて“鈍器のようなもの”でガツンでっせ。それが情けないッちゅうか、ヒカリモノとはほど遠い、ただの〈ニンゲン〉どもの『会心のイチゲキ』で、多くの同僚が倒れました。かろうじて、なんとか生き残ったモノもトドメは必ず、決まって“あの若いヒカリモノ”が」

「ああワイも見たで。ありゃゼッタイ経験値稼ぎやな。あの若いヒカリモノ、手塩にかけて育てるつもりでっせ、あのマジィなオーラ全開のあのオッサン」



 “マジィなオーラ全開のオッサン”……タダ者ではないでしょう。



(なが)しのヒカリモノは、どうやらソイツっぽいのう。【ふもとの村】に立てこもって、コッソリ教育的指導しちょるんか。そりゃ厄介じゃ」

「このたび現れたのは、脅威とは成り得なかった【ふもとの村】に住む彼らの、眠っている潜在能力を引き出す、偉大な指導者のような存在――ですね。確かにそれは我々として、もっともやられたくない方法かもしれません。しかし、こんなことは今まで一度もありませんでした」

「支店長ォ。つまりソイツは、いつもの挑戦者やないちゅうことですか?」



 するとルバロバ殿を始め、コノミさんも《ジャジャホース》も

 《フラワーエイブ》も生き残った《ホーンダック》も

 途端に無言になりました。



「……これは私の勝手な推測ですが、近い将来、我々だけでなく〈マのモノ〉全体に降りかかる回避不能な『大いなる災厄』となるかもしれません。支店長、どうすればいいのでしょう!」



 い、イタタタタタッ。

 オエッオエーー。



 場の雰囲気が重苦しい!



 〈新悪代官サマ〉が降臨なされて、

 これから上り調子になっていくはずが

 もう『大いなる災厄』の心配をしなくてはならないとは……トホホ。

 向こうの陣営の用意周到ぶりは恐ろしゅうございます。



「えらく状況が変わったのう。“ビック・ボス”のオイは、ココを離れるワケにいかんけェ。ヤツらがウチの支店に来てくれるまでは手をくだせん」

「でしたら、わてらが行きます! その流しのヒカリモノのクビ、わてらが取ってくるで! 出陣のご命令を、支店長ォ」


「いけません《ジャジャホース》さん! 【ふもとの村】の戦闘スキルは、以前とは比較になりません! 《ジャジャホース》部隊がお強いのは存じておりますが、闇雲に突入しては《ホーンダック》部隊の二の舞です! もっと情報を集めて、それから入念に対応策を練って」


「その偵察部隊が全滅したんやろ。ええかコノミィ、こうしとる間にも〈ニンゲン〉どもの戦力は、どんどん増大しちょる。せやから叩くんは今や。【ふもとの村】出身のヒカリモノは、なによりキケンなんや。それにな、わてらやったら全滅せえへんわ。支店長ォ、行かせてください」

「いたずらに戦力を減らすだけです、いけません!」



 しーん。



 いつまで経っても、しーん。

 この騒がしい支店に、こんな場面は似合いませんな。

 ハッキリ申しますが、やはり“必要ございません”。

 これぞ削減されるべき、大いなるムダにございます。



「ルバロバ殿」

 なれば。


「なんじゃポチ。恐くてチビリそうやったら本社に帰れ。誰も止めやせん」

「私がお勤めする場所は、今はココにございます。お傍を離れません」



 私がたったひとつ、たったひとつ――

 誰よりもできることがあるとすれば。



「勇ましいが、おまんがひとり居たところで状況は変わらんぞ」

「私は、あと押しするだけ。成功へと導くのは、皆サマにございます」



 そのモノが歩きたいと願っている方向に。



「メインはオイたち、っちゅうことやな。それは間違いないか?」

「我らが〈新悪代官サマ〉は、最初から皆サマを固く信じておられます」



 背中をそっと押すことにございます。



「奪われるワケにいかんのじゃ。なにがあっても。どうすればエエ?」

「私に秘策がございます。必ずや、その設定を変えてごらんにいれましょう」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ