level.15 【アンゾルゴンのア大灯台】 29階の さん
「アレは間違いない! 正真正銘の『ヒカリモノ』でっせ!」
興奮しきりに《ホーンダック(鴨鹿)》が申します。
「あの本物っぽい、“マジィなオーラ”……」
まばらになった美しい白い羽が
ちょっと動くたびにパラパラ抜けていきます。
すっかりハゲちゃった地肌は、ほんのり染まった桜色。
おおイタイタしい《ホーンダック》。
命からがら【アンゾルゴンのア大灯台】支店に辿り着いた偵察部隊は
その半数以上が帰還を果たせず。
目に大粒のナミダを浮かべながら
酷使した細っこい足をさすりながら
生き残った《ホーンダック》は当時の惨状をぽつりぽつりと語ります。
「ワイをかばって、幼なじみのアイツは」
なるほどなるほど。
「『ヒカリモノ』の呪文が、幼なじみのアイツの背中にモロに……」
それはきっと、アイです。
「眠りに就くんはワイやったァ! ワイをかばった幼なじみのアイツは……なんでアイツゥ!」
幼なじみ・“哀”です。
溢れんばかりの悲しみの『哀』ですな。
「この任務が終わって無事に故郷に帰ったら――出撃前、そうアイツは不気味につぶやいたんです。幼なじみのアイツは、この任務を無事に終えて臨時ボーナスを支店長から受け取ったら、“け”、“け”、“け”」
ああ……立てちゃったワケですな。
旗を。
ええ分かります分かります。
ポロッと安易に口にしてはいけないヤツです。
出撃前なんてもってのほか。
未だかつて、その旗を立てたモノはゼッタイ無事には帰れません。
「“け”、“け”、“毛”をォ、たくさん“毛”を増やしたいって!」
増毛希望だったんかい!
しょーもな!
完全に削減対象になるムダボケですぞッ!
「全面攻勢に出る時期やと、わてらは思います」
断ち切るように《ジャジャホース》部隊が代表して
シリアスに申し出ます。
「支店長、どうかご決断を」
「ほうか。それっぽいのが居たか。それにしても不思議じゃのう」
「このたび〈新悪代官サマ〉が本社に降臨なされた。時を同じくするように“まるでこの時を待っていたかのように”彗星のごとく出現した『ヒカリモノ』……」
インテリメガネが輝き
通常モードに戻ったコノミさんが危惧するのは
その『ヒカリモノ』が
悪代官サマをも眠りに就かせる“逸材”である可能性――。
この【アンゾルゴンのア大灯台】周辺の小さな群島は
〈かつての光のモノ〉を数多く輩出する
〈ニンゲン〉どもの『聖地』にございますゆえ。
「で、その『ヒカリモノ』は、どんな恐ろしい呪文を使うんや?」
興味津々の《ジャジャホース》部隊の面々。
戦力の把握は、基本中のキホンにございます。
「いえ、たぶん大したことは、なかです」
なか?
大したこと……ない?
「ワレの“幼なじみのアイツ”とやらは、それで倒れたちゃうんかい!」
「だから屈辱ですねんソレ」
「どういうこっちゃ。その『ヒカリモノ』は、呪文使いの『インテリタイプ』ちゃうんか? じゃあゴリ押し大好きの『キンニクタイプ』か?」
「どうでっしゃろ。どちらかと言えば“そっち”は『なんでもタイプ』?」
なぜか要領を得ない《ホーンダック》の報告。
気の短い彼らのフラストレーションが溜まるのも分かります。
同じく私もイライラ。
「トドメだけ差しよる、あの“若いヒカリモノ”」
な、ななな!
「ま、待てェ! 待て待てェ! ちゅうことは……?」
「ええと皆さん……さっきから“どっち”のことを言うてはるんですか? なんやゴッチャになって、よう分からんのです。皆さんが聞きたいのは“ワイの幼なじみを眠りに就かせたヤツ”か、それとも《ホーンダック》部隊を壊滅に追い込んだ、あの“マジィなオーラ全開のヒカリモノ”ですか?」
どっち――
「支店長ッ!」
「これでハッキリした。ノーマークの『ヒカリモノ』が、いきなり現れるッちゅうんは、そういうことじゃ。【ふもとの村】に住むヤツらのレベルが劇的に上がることはなか」
低レベルの〈ニンゲン〉ではルバロバ支店長がニラミを効かす
【アンゾルゴンのア大灯台】支店は、まず攻略不可能。
これは誰が見てもノーチャンス。
努力でカバーできる範囲を完全に超えております。
「では、考えられる可能性として挙げられるのは」
コノミさんのインテリメガネがその時、キラリと輝きます。
「別の大陸から“流れ着いたヒカリモノ”。やはりその目的は、我が【アンゾルゴンのア大灯台】支店の完全攻略。つまりは最上階に灯っております通称“マガマガしい悪魔の炎”の消火」
「そういうことじゃ。ヤメヤメ、出陣は止めじゃ。ほいじゃあ、気楽にいこうや皆の衆」
「なーんや。心配してソンしたわ、いつものことやん。《ホーンダック》がマジ過ぎやで」
「ワイでっか! 悪いのはワイですか! お言葉ですけどマジィなオーラがビンビンでっせ“そっちのヒカリモノ”はん!」
「ダアホ。まだ分かってへんのか。支店長の言う通り、気張る必要なか。ドーンと、いつも通り、ここでヤツらを待ち構えておればエエんじゃ」
「ほうですか……百戦錬磨の《ジャジャホース》はんが言うんでしたら。しかし、ムムムム」
な、なぜ。
「準備運動でもしておけや。流しのヒカリモノやったら簡単な業務やで」
「どッ、どうしてですか!」
そこで私は、思わず大声を張り上げてしまいました。




