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悪代官サマ と ユカイな仲マたち  作者: 中田 春
【 アンゾルゴンのア大灯台 】 編
16/82

level.15  【アンゾルゴンのア大灯台】 29階の さん


「アレは間違いない! 正真正銘の『ヒカリモノ』でっせ!」

 興奮しきりに《ホーンダック(鴨鹿)》が申します。



「あの本物っぽい、“マジィなオーラ”……」



 まばらになった美しい白い羽が

 ちょっと動くたびにパラパラ抜けていきます。

 すっかりハゲちゃった地肌は、ほんのり染まった桜色。

 おおイタイタしい《ホーンダック》。

 命からがら【アンゾルゴンのア大灯台】支店に辿り着いた偵察部隊は

 その半数以上が帰還を果たせず。



 目に大粒のナミダを浮かべながら

 酷使した細っこい足をさすりながら

 生き残った《ホーンダック》は当時の惨状をぽつりぽつりと語ります。



「ワイをかばって、幼なじみのアイツは」


 なるほどなるほど。


「『ヒカリモノ』の呪文が、幼なじみのアイツの背中にモロに……」



 それはきっと、アイです。



「眠りに就くんはワイやったァ! ワイをかばった幼なじみのアイツは……なんでアイツゥ!」



 幼なじみ・“哀”です。

 溢れんばかりの悲しみの『哀』ですな。



「この任務が終わって無事に故郷に帰ったら――出撃前、そうアイツは不気味につぶやいたんです。幼なじみのアイツは、この任務を無事に終えて臨時ボーナスを支店長から受け取ったら、“け”、“け”、“け”」



 ああ……立てちゃったワケですな。

 旗を。

 ええ分かります分かります。

 ポロッと安易に口にしてはいけないヤツです。

 出撃前なんてもってのほか。

 未だかつて、その旗を立てたモノはゼッタイ無事には帰れません。



「“け”、“け”、“毛”をォ、たくさん“毛”を増やしたいって!」



 増毛希望だったんかい!

 しょーもな!

 完全に削減対象になるムダボケですぞッ!



「全面攻勢に出る時期やと、わてらは思います」



 断ち切るように《ジャジャホース》部隊が代表して

 シリアスに申し出ます。



「支店長、どうかご決断を」

「ほうか。それっぽいのが居たか。それにしても不思議じゃのう」

「このたび〈新悪代官サマ〉が本社に降臨なされた。時を同じくするように“まるでこの時を待っていたかのように”彗星のごとく出現した『ヒカリモノ』……」



 インテリメガネが輝き

 通常モードに戻ったコノミさんが危惧するのは

 その『ヒカリモノ』が

 悪代官サマをも眠りに就かせる“逸材”である可能性――。




 この【アンゾルゴンのア大灯台】周辺の小さな群島は

 〈かつての光のモノ〉を数多く輩出する

 〈ニンゲン〉どもの『聖地』にございますゆえ。



「で、その『ヒカリモノ』は、どんな恐ろしい呪文を使うんや?」



 興味津々の《ジャジャホース》部隊の面々。

 戦力の把握は、基本中のキホンにございます。



「いえ、たぶん大したことは、なかです」



 なか?

 大したこと……ない?



「ワレの“幼なじみのアイツ”とやらは、それで倒れたちゃうんかい!」

「だから屈辱ですねんソレ」

「どういうこっちゃ。その『ヒカリモノ』は、呪文使いの『インテリタイプ』ちゃうんか? じゃあゴリ押し大好きの『キンニクタイプ』か?」

「どうでっしゃろ。どちらかと言えば“そっち”は『なんでもタイプ』?」



 なぜか要領を得ない《ホーンダック》の報告。

 気の短い彼らのフラストレーションが溜まるのも分かります。

 同じく私もイライラ。



「トドメだけ差しよる、あの“若いヒカリモノ”」



 な、ななな!

「ま、待てェ! 待て待てェ! ちゅうことは……?」

「ええと皆さん……さっきから“どっち”のことを言うてはるんですか? なんやゴッチャになって、よう分からんのです。皆さんが聞きたいのは“ワイの幼なじみを眠りに就かせたヤツ”か、それとも《ホーンダック》部隊を壊滅に追い込んだ、あの“マジィなオーラ全開のヒカリモノ”ですか?」


 

 どっち――



「支店長ッ!」

「これでハッキリした。ノーマークの『ヒカリモノ』が、いきなり現れるッちゅうんは、そういうことじゃ。【ふもとの村】に住むヤツらのレベルが劇的に上がることはなか」



 低レベルの〈ニンゲン〉ではルバロバ支店長がニラミを効かす

 【アンゾルゴンのア大灯台】支店は、まず攻略不可能。

 これは誰が見てもノーチャンス。

 努力でカバーできる範囲を完全に超えております。



「では、考えられる可能性として挙げられるのは」

 コノミさんのインテリメガネがその時、キラリと輝きます。


「別の大陸から“流れ着いたヒカリモノ”。やはりその目的は、我が【アンゾルゴンのア大灯台】支店の完全攻略。つまりは最上階に灯っております通称“マガマガしい悪魔の炎”の消火」

「そういうことじゃ。ヤメヤメ、出陣は止めじゃ。ほいじゃあ、気楽にいこうや皆の衆」

「なーんや。心配してソンしたわ、いつものことやん。《ホーンダック》がマジ過ぎやで」

「ワイでっか! 悪いのはワイですか! お言葉ですけどマジィなオーラがビンビンでっせ“そっちのヒカリモノ”はん!」 

「ダアホ。まだ分かってへんのか。支店長の言う通り、気張る必要なか。ドーンと、いつも通り、ここでヤツらを待ち構えておればエエんじゃ」

「ほうですか……百戦錬磨の《ジャジャホース》はんが言うんでしたら。しかし、ムムムム」



 な、なぜ。



「準備運動でもしておけや。(なが)しのヒカリモノやったら簡単な業務やで」



「どッ、どうしてですか!」



 そこで私は、思わず大声を張り上げてしまいました。




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