level.14 【アンゾルゴンのア大灯台】 29階の にぃ
すると、そこに居るすべての〈マのモノ〉たち、一斉に私をガンミ!
「こいつァ、どこのモンじゃ」
「本社から寄越されたらしいで。わてらを監視するそうじゃ」
「なんやホンマかい? なにを考えてんねん本社は」
「応援ちゃうんか」
「ちゃうわアホンダラ! これっぽっちの応援があるか! なんの足しにもならへん。そこのワレェ……なんて言うたか……誰か覚えてへんか!」
「“ポチィ”やったで。たったの三文字で“ポチィ”や。自分、アタマ悪過ぎるやろ。さっき支店長が言うたやん」
「そうやポチィ、ポチィや。オイ、ポチィ、お前強いんか?」
え。
「どうや。どんな呪文が使えるんじゃ? ええやん、教えろや」
「やっぱし本社勤務のエリートは、違うんじゃろうなあ」
「ダアホ。ワレの、そのアホンダラのスカスカな脳ミソちゃうで。当たり前。最初から勝負にならん」
「なんや《ジャジャホース(太刀馬)》! もういっぺん言うてみい!」
「ワレも《ジャジャホース(太刀馬)》じゃアホンダラ! 鏡見てこいや」
「わてら、なんも変わらへん。ドイツもコイツも《ジャジャホース(太刀馬)》」
とにかく騒がしい。
口はずっと動きっぱなし。ひとときもダマっておりません。
気安く冗談を飛ばし合ったかと思えば
腰に提げる大太刀をカチャカチャ鳴らし、
なんの前触れもなく彼らは同じ顔で突然怒り出します。
傷だらけのイカツイ長い顔に似合わない
その会話のテンポの良さはピカイチ。
ただのシロウトには乗れまへん。
「で」
またもや一斉に視線を浴びる私。
「なにができるんじゃ自分」
「な、なんですかねえ……あはは。そう言われてみれば……?」
「なんや隠すんかい。わてらには絶対ナイショか。イイ性格しとるのう、本社のエリートさんは。ナイショナイショじゃ、ココでは生きていかれへんでニイチャン」
「オール・オープン精神や。ひとりクローズすんなや」
「ノリ悪いわ。ヒキコモリか自分。傷つけられたくないお年頃か」
「ナイーブやのう。本社はいつも平和か。騒がしいワレェ、本社じゃ仕事でけへんぞ」
「なんの心配じゃ。もうええわ」
はっ。やっと終わった。
「ええかニイチャン。この支店に来たんは、ニイチャンにはよう分からん、ただの成り行きかもしれん。――が、ここにポツンと居るからには、わてらのルールに従ってもらわなアカンで。そっちのオジョーチャンと、向こうのケッタイな《スライム》もな。協力せな、楽しくやっていかれへんねん。分かるやろ?」
「おお。脳ミソスカスカのワレにしちゃ、珍しくエエこと言うた。ほいじゃ、久々にいくでぇ。自分らも口ずさんでもう一度キッチリ思い出せや!」
「――この【アンゾルゴンのア大灯台】支店のモットーは?」
すう、と、
二十九階(作戦会議室)に集まったすべての《ジャジャホース》と
《フラワーエイプ》、その時だけ口を止めて大きく息を吸い込んで腹を
いっぱいに膨らせますな。
「『開かれたダンジョン』(ウキキキッ)じゃ!」
決まった。
一同、ドヤ顔しております。
しかし、となりで《リトルウィッチ》がオオアクビ。
と、そのオオアクビが止まります。
そのまま大口をキープして、
視線だけをそちらに向ける《リトルウィッチ》。
突然の出来事に、かなりビックリしている彼女。
「し、し、支店長ォ、来ましたよ! 来ました来ましたァ、ようやくです! 偵察に出ていた《ホーンダック》部隊が――きゃあ!」
どんがらがっしゃーん。
向こうの階段から、すってんころりんサア大変。
すると絵に描いたようにコノミさん、
「ないないない」と、派手に散らばった書類の上で
またもや魅力的なフトモモを露出させております。
「なんじゃコノミィ。おまんのコントはもうエエで。用件だけ言えや」
「うわぁ、ないわ。またや……なんで。ねえなんでなん! 勝手にどこいくん、ウチのメガネ? いっつもいっつも、ハラ立つわぁ」
「ボンドで顔にピッタリくっ付けろや。うるさいのう」
「そんなん風呂に入れへんやん! メガネ曇ってしゃーないわ。ホンマ、ジョーダンきついで支店長。ウチ、めっちゃ真剣に悩んでます。笑いごとやない」
「でェ、なんじゃ。《ホーンダック》部隊が帰って来たんか。それが上から見えたんか?」
「そうなんです」
ズッ(こける私)。
「これで、ようやく動きそうじゃ皆の衆。守るにせい、攻めるにせい、ここで互いにボケ合っても、どうしようもなか。早ぅ終わらせたいもんじゃのォ。今は、心の底から笑えんわ」
確かに無益ですなあ。
聖域なき経営合理化を進める我が社としては、百害あって一利ナシ。
まったく利益を生まない“ムダボケ”は、切り捨てる他ありません。
次回、大活躍の予感(?)が。




