level.9 おうえん した。 〈仲マ〉 が あらわれた!!
「おおこれが!」
これぞ我が社のランドマークタワー。
目の前にそびえる石造りの、
この『超』巨大建造物が【アンゾルゴンのア大灯台】。
誰が建てたかは知りません。
世界の中心に位置し、そして世界最長を誇ります。
天にも届きそうな建物のてっぺんに灯される、
通称“マガマガしい悪魔の炎”は、遥か彼方の『第四の大陸』からも
確認できるほど、壮大なスケールで展開中。
「おかえりなさいませ支店長ォ!」
ハッと我に返り、視点を“通常モード”に戻します。
こ、これは?
「おかえりなさいませ支店長ォ!」
「出迎えなんぞ、ええっちゅうんじゃ。ケツの穴かゆくなる。やめんかい」
なんと私が目にしたものとは……
【アンゾルゴンのア大灯台】まで続く、
見晴らしの良い小道に伸びる伸びーーる、
大勢の〈マのモノ〉の大行列にございました。
「おかえりなさいませ支店長ォ!」
小さなモノから大きなモノまで
背の高さや容貌はそれぞれバラバラですが、
こちらに向ける視線の種類は、すべて同じにございます。
老いも若きも瞳を輝かせてルバロバ支店長を“ガンミ”。
これだけの〈マのモノ〉の視線を一斉に浴びたのは初めてにございます。
かなり、しんどい。
肉体と精神にのしかかる情熱の量がハンパではありません。
「……おう。皆の衆、ただいまじゃ」
すると照れくさそうに支店長、
長いお鼻をポリポリしまして、大量のキンニクが盛り上がる
たくましい右腕を挙げ、押し寄せた部下の期待にカッコよく応えます。
果てしなく伸びるアーチの中をルバロバ支店長に続いて、
おそるおそる進みます。皆の視線が「アイツは誰だ? なんなんだ?」と
言っている気がしてなりません。
あたっ! 鉄板のような固いモノにぶつかります。
私には越えられない壁と思いきや、ルバロバ支店長の背中が真ん前に。
「おかえりなさい支店長。連絡いただければ、お迎えに上がりましたのに」
「そんなもん、いらんのじゃ。できることは自分でやるんが、オイの信条じゃ。余計な気を回すんじゃなか」
「あんな場所から泳いでこられたんですか……やはりそれは……フツウではありませんね」
でしょうね。
これからは連絡がなくても迎えにきてください。
「久しぶりの本社はどうでした?」
「――はん! 相変わらず、うっとうしいところじゃ。あんなジュクジュクした場所に、いつまでも住んじょるから根性のひん曲がったガキが多いんじゃ。オイは好かん!」
「ふふっ。支店長らしいですね」
あなたはそれでいいのです、
と耳に心地よい女型の甘い声。
「あら?」
ドキッ。
こんなにも傍で、いきなり目が合ってしまいました。
ルバロバ支店長のたくましい大きな背中から
ひょっこり現れました若い女子社員は一切の動きを止め
インテリメガネの奥の可愛らしいクリッとした瞳で
後ろの私を不思議そうに見つめます。
「あのう私、本社のモノです」
「本社……? ああッ、本社の方ですか! し、失礼しましたァ!」
私の心臓バックバク。
止まった時間が急速に流れていきます。
「じっくり見てごめんなさいッ!」
いえ、こちらこそ。
おかげで仕事のヤル気が、ずいぶん上がりました。
「コノミィ」
「ひっ!」
すると彼女、こちらが心配してしまうほど慌てふためいて振り返ると、
あの肉厚なキンニクの壁に勢いよく激突します。
「痛ったあ。い、いい、いきなりな、なんですか支店長ォ!」
「なにを慌てちょるか。そそっかしいのう、おまんは」
「あれ……メガネ……? いつもより支店長が、ボ、ボボ、ボケて見えると思ったら、ウチのメガネッ! ないやん、どこいったん!」
「コノミィ、言葉が戻っちょるぞ」
ないないない、とまるで絵に描いたように“コノミ”さん、
なにより大切っぽいインテリメガネを血眼になって、
イッショウケンメイ探しております。
「ウソやろ……うわあ、ないわぁ。なんでなん、ねえなんでなん!」
こりゃマジです。
大切なメガネを求めて必死に動き回る彼女のスカートが次第に
ズリ上がって、最高に魅力的なフトモモが露出していきますぞ。
そろそろ止めないと、さすがにマズイ。
なれば。
うおっほん!
応援してあげましょう。
〈マのモノ〉は、がんばるモノが大好きです。
「そのォ、コノミ殿」
「すんませんけど、それどころやないんです。ないと仕事になりまへんねん」
「あなたのメガネでしたら、ルバロバ殿のすぐ足元に」
「ど――どこや! 支店長のアシッ、足アシッ、足どこやっちゅうねん! ホンマお願いしますわ支店長、絶対そのまま動いたらアカン。割ったら承知せえへんで! そして居りましたら大きな声で返事してつかァさい。すぐ飛んでいきます!」
「おう、ここじゃ」
スッと表情を消し、長い耳をピンと立てたコノミさん。
すかさずピュイッと軽快にジャンプして、ルバロバ支店長の足元めがけ
正確無比に着陸いたします。
そしてそこにあった青色フレームのインテリメガネを発見すると
愛おしそうに頬ずり。
「ああよかった……これで私、皆さんと一緒にお仕事できます……」
本当によかったです、コノミさんが“通常モード”に戻って。
なんだか周りの〈マのモノ〉たちも安堵したようで
拍手が巻き起こりますな。
「あ……ありがとうございます! 皆さん、ご迷惑をおかけしました! コノミ、もっともっとがんばります! これからも暖かい応援よろしくお願いしますッ!」
折り目正しく方々へ、精いっぱいの感謝の念を伝えます。
それに呼応するように、次第に大きくなる“コノミコノミ”の大合唱。
【アンゾルゴンのア大灯台】支店で今、
感動のワンシーンが誕生しました。
すかさずメモリーに残そうと思います。
なお、ルバロバ支店長のキンニク・フォトは
惜しまれつつ消去いたします。
「いちいち騒がしいヤツじゃ。コノミィ、いつまでそこに居る気じゃ。『ヒカリモノ』は待っちゃくれんぞ、とっとと付いてこんかい。偵察に出した《ホーンダック》部隊はどうなっちょる。無事に帰ってくれんと困るぞ」
コノミさん、慌てて乱れた服装を正します。
これでホントに元通り。
そして大股でノシノシ歩くルバロバ支店長の後を、軽快にピョンピョン。
イイですなあ。
私もいつか、あんなカンジで……。
「ポチサマ」
むふ。
「ポチサマ」
イチャイチャしながら、ねこぱんち。
「ポチサマ!」
もちろん私のオフィスである【うす暗い部屋】で。
「ゴラア、ポチィ! アタイを完全ムシすんなッ!」
「げえっ!」
な、なぜ《リトル・ウィッチ》……?
そして、いつもと様子が違ってる……。
あの薄着をやめて、
“新調したビジネススーツ”で彼女はバッチリ決めております。
「げえっ、じゃないでしょ。イヤなの?」
「どうしてここに居るんですか! それに、あなたのその恰好――」
もう子供とは呼ばせない。
一転して、リニューアルした《リトル・ウィッチ》から
アダルトな色香がムンムンにございます。
バリバリのキャリアウーマンに、クラスチェーーンジ!
「応援に来たの。この子と一緒に」
するとニュルルゥと、彼女の後ろから懐かしい顔がお目見えします。
「手伝うぞ。なんなりと申せ」
私そっくりの紫色。本当に久しぶりです。
サルトン博士の大失敗から偶然生まれちゃった《???(巨大粘液)》が
目の前におりました。
どっちが私で、あなたは誰?
気を抜くと業務に差し支えるほどの、深刻な障害が発生しそう。
その容姿はデフォルトなのか……?
「あわあわ。まったく状況が掴めませんぞ」
「だから応援に来たの。ポチサマだけだと心配だって〈新悪代官サマ〉が」
「う、ウソだッ!」
「ウソつく必要ないでしょ」
なんと。
自由におしゃべりになるのか〈新悪代官サマ〉……。
なんだかそれを聞いて嫉妬心がメラメラ燃え上がります。
第二秘書の《リトル・ウィッチ》とだけ楽しくおしゃべりなんて悔しい!
私には“越えられない壁”がうっすら見えますぞ!
「それより行かなくて大丈夫? ルバロバ支店長の姿が見えないよ」
「たった今、行こうと思っていたところであります!」
「なに怒ってるの? アタイなんかした?」
「見えないところで勝手にイチャイチャしないでください! ああイヤらしい。ほら行きますよ、さっさと私に付いてきてくださいッ!」
「あ、ちょっと」
へへ。
思わぬところで嬉しいハプニング。
やはり知っている顔を見ると、ウキウキしますな。
気心の知れたパーティーが現地で結成されまして、
これで抜かりはありません。
いざ、【アンゾルゴンのア大灯台】内部へ。




