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悪代官サマ と ユカイな仲マたち  作者: 中田 春
【 地獄の城塞 】序編
1/82

ぷろろーぐ。

〈マのモノ〉は、がんばるモノが大好きです。


「ググググゥ……」



 それきり、静寂に包まれた。



 ぷすぷすと不快な音が、

 果てなどないように思える、この広大な空間を満たしている。

 強烈な腐臭――立ち昇る大量の蒸気――

 まるでそれらが、死肉を求める《グール(幽鬼)》の群れのように

 〈闇のモノ〉の全身を蝕んでいく。



 すっかり動きを止めた巨大な肉塊からは、

 あの恐怖のどん底にまで世界を落とし入れた、かつての〈闇のモノ〉が放つ、

 まがまがしいほどの絶望のオーラは感じられない。




「見事だ……〈光のモノ〉よ……天によって選ばれし勇敢なる子らよ……我らはこの敗北で消滅するのではない……お前たち愚かな人間どもの邪悪な心が……この世からなくならない限り……我は何度でも蘇ってみせよう……」




 聖なる方向へと世界を導いた彼らの目の前で、

 その弱々しい生の鼓動が、今――



「グフッ」


 途絶えた。


 まるで地獄から響いてくるような断末魔は

 その〈闇のモノ〉を苦心の果てに打ち倒した〈光のモノ〉らの心の奥底に

 言い知れない不安の種子を落とし込んだのだった。




 この輝かしい栄光の勝利によって、彼らの長い旅は終焉を迎える。

 そして――



 

 世界が光で満ちた。




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