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死神said 氷を溶かす手
ピンと張りつめた空気。
先に動いたのは彼女だった。
縮まりそうで縮まらない。
そんな距離をものともせずに踏み込んできて・・・
「ねぇ、名前教えてよ」
そう言って彼女の華奢な両手が己の右手を包み込んだ時、はっとした。
白魚のような手とはほど遠いかさついてあかぎれた仕事をする者の手。
マッチを売るために長い間外にいたせいだろう、冷たく冷え切ってしまったそれが、なぜか温かいと思ったのだ。
気のせいであることは分かっている。
それでも、今まで出会った誰のものよりも温かく、清廉であるような気がした。