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とある国、その片隅で
これはずっと昔、雪の降り止むことのない国でのこと。
その国に住むマッチ売りの少女がおりました。
少女は早くに母を亡くし、荒くれ者の父と二人で暮らしていました。
一日の食事にも困るほどの貧しい生活。
それでも父は博打に酒にと金を使いまわる日々。
果てには暴力までふるい始め、少女の心はもう限界をとっくに超えていました。
そんな少女の運命を変えたある夜の出来事です。
少女はその日もまた、降り続く雪の中でマッチを売り歩いていました。
道行く人々は彼女に目をくれることもなく、通り過ぎて行きます。
マッチは売れないまま時間だけは過ぎゆき、人一人通らぬ時刻となったとき、少女は空を仰ぎ、何事かを呟きました。
その声は闇に消え、雪に溶け、何者にも届くことはありませんでした。