始まり語り
死神は人の死に干渉してはなりません。
これは掟として記されています。
なぜなのか、それは至極簡単なことです。
私達にも感情というものはあります。
それ故に対象者を狩らずに生かしてしまったり、逆に対象から外れているものを狩り取り殺してしまうなど、理を外れたことをしてはいけないからです。
けれど神々は最初、このことに気づくことができませんでした。
死神をただの道具としか思っていなかったからです。
私達も、感情を持つれっきとした生き物であるというのに・・・
かの方々がそれに気づいた時には、もう手遅れでした。
人間の世も、神の世も、すべての世を巻き込む悲劇はもう幕を開けていたのです。
その悲劇は、ある一人の男の願いによって引き起こされました。
男の名はクロス、神を父に持つ異質な死神でした・・・
彼はその特殊な出生のため、いくつもの業と、底知れない闇を抱えていました。
それ故に、だったのかもしれません。
あきらめたはずの光を前にして、もう失いたくはないと願ってしまったのは・・・
けれどそれは、死神ならば決して願ってはいけないことでした。
現に彼の願いは世界を引き裂き、私達から鎌を奪ったのですから。
ただ、ほんの少しでも彼の気持ちを理解してほしいのです。
だからこそ、私は語ります。
だれも知ろうとはしなかった、禁忌の始まりの物語を-・・・