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死にぞこないの英雄  作者: 雷帝
開幕編
8/9

追憶

新作

しかし、何ですね……紹介に書いた残念さというかギャグ要素がない……

 ――長かった。

 イスクードの城壁を目の当たりにしてふとそう思った。

 今回の作戦は確かにイスクードへと攻め寄せはしたが、攻略の予定はない。

 攻城兵器もわざわざ持って来てはいるが、単なる見せ金以上のものではない。最も攻略する「つもりだった」と見せる為にも実際に使う必要はあるだろうが。

 それは必然的に犠牲者を出すという事だ。

 今回の作戦はいわば本命の魔王討伐作戦の為の作戦、の更に前段階の作戦。意味はある、だが……。

 そう思い、それを心の中に納めたまま振り払う。

 それ以前の問題だ。死ぬ兵士や騎士にしてみれば何時、どんな理由で死ぬ事になろうが、死ぬのは同じ。

 そんな事を考えながらイスクードの城壁を見つめていると、それに気づいたらしい副官が問いかけてきた。


 「将軍?どうされましたか?」

 「……なに、存外再びここに来るまで長くかかったな、と思ってな……」


 一瞬首を傾げかけて、副官は気がついたようだった。彼が六年前のイスクード陥落の際、多数いた小隊長の一人としてここにいた事を。

 ……そう、当時は何の力もない小隊長だった。

 貴族の家に生まれながら、自分の力を試してみたいと親に駄々をこね、わざと立場を隠し、一介の騎士として騎士団に入った。

 その中で自らの力だけで着々と上を目指していた……けれども、だからこそ。六年前、彼は何も出来なかった。

 彼は当時、単なる小隊長であり、上に上申しても所詮は多数の意見の一つ。陥落の際には何も出来なかった。

 故に彼は実家に戻り、父に直談判し、貴族の嫡男として戦場に赴き、実績を積み上げた。そうして今、彼は将軍と呼ばれる立場となってここにいる。

 城壁を眺め、副官に言葉を返した事で彼の脳裏には六年前の事が思い返されていた……。


~~~


 国境要害イスクード。

 この要塞であると同時に街でもある地は元々は人族の側のものであった。

 もう少し正確に書くならば、現在の国境線とでもいうべき線がある程度の落ち着きをみせた先代魔王討伐よりおおよそ百年程の後の事。

 当時の国境線沿いには砦が築かれていたが、それらを支援するべき場所はいずれも遠方にあった。

 これは仕方がないといえば仕方のない話で、一時は人族側は相当魔族に押し込まれていた。

 結果、取り戻したとはいえ、この地に元々あった王国や小国家は軒並み滅びており、街や村も打ち捨てられた廃村ばかりだった。

 しかし、取り戻した以上は再び押し返されないよう維持しなければならないし、その為には後方は絶対必要である。最前線の砦に勤務して、一月以上かけて安全な街まで戻って、また一月以上かけて補給物資と共に任務に就きに行く……効率が悪い事はなはだしい上に、砦が魔族側の攻撃を受けても救援を求められる程の規模の軍勢が駐屯する街まで馬を飛ばしても十日以上。

 それから軍勢を動かしていれば、救援が辿りつくのは騎馬部隊のみを先に動かそうが、どうやっても一月以上の時間がかかってしまう。

 それではまず間違いなく手遅れだ。今は魔族側も混乱しているから守りに徹し、大規模に攻めてこないから何とかなっているが、このままでは……まともな頭を持っている者は誰もがそう考えた。

 結果として、最前線の砦郡を統括する後方拠点として築かれたのがイスクードだった。

 最初期こそ単なる大きな城だったが、それでは疲れて砦から休息を取りに戻ってくる兵士を休ませるには足りない。兵士にとってそこが家族のいる家があり、遊ぶ為の場所があり、酒や女がいて美味いものが食える……そんな都市でなくてはならなかった。

 魔族との最前線を支える為の大規模拠点とあって、各国も乏しい中から物資を供出し、頑強な都市へと変貌していった。

 イスクードは最前線を支える人族になくてはならぬ都市だったのだ。 


 ……だった、だ。

 長い時間が過ぎれば堕落もする。幸いな事に、眼前に魔族という脅威があり続けた為に軍隊こそ精強ではあったが、どこかに弛緩があった。

 都市を統治する貴族は初期の軍人貴族による定期的な派遣から世襲化の道を辿り、兵士達でさえどこかに「もう魔族はここまでは攻めてこないさ」、そんな油断があった。それを責める事は出来ないだろう。この要害が現在の規模になって以来数百年。ここまで魔族による大規模な侵攻はなかった。

 昨日今日の事ではない。最早彼らにとって魔族による大侵攻など遥か昔の物語の中だけのお話、現実味がない事甚だしい。もちろん、魔族を侮るつもりはない。小競り合い自体は時折発生しているし、魔族が手強いのも理解している。けれども、奴らとて砦という名の国境線防衛要塞郡を抜いて、この街まで押し寄せる事はないさ……。

 誰もがそう思っていた。

 そして、それは彼こと将軍、当時は小隊長であったマルケスもまた同じであった……。


 その日、マルケスは特に変わりなく過ごしていた。

 イスクードは最前線を支える軍事拠点であるが、同時に兵士達の家族が住む街であり、独身の者も楽しく過ごせるような美味も快楽も金さえ出せば揃う、そんな街だ。

 マルケスも家にいた頃は実直そのものな男だったが、若い独身の騎士となれば年輩者がさりげにそういう悪所へ連れて行ってやるのが騎士団のみならず組織の流儀という奴だ。何よりどこかで発散させねば、そして気の抜き方も覚えなくては何時か参るし、下の者も気が抜けない。

 かくして、当時のマルケスも真面目な所は変わらなかったが、それなりに気の抜き方、という奴を覚えていた。実際問題として、魔族との小競り合いもある砦勤めから帰ってきたら、何らかの形で発散させないと身が持たないのを自分の身で味わったからだ。


 「ふあ……」


 あくびをかみ殺す。

 夜の見回り責任者の一人として徹夜明けだ。もうじき夜が明けるがやはり眠い。

 明日はどうするか、などと考えてみる

 明日からは休みだったが、特に予定はない。

 定期的にまとまった集団にまとまった休みを与えた方が街の活性化には良いと設けられた制度だ。一応、三交代制であり一つが休みの日には残る三分の二が任務に就いている、というと一見すると合理的に思えるかもしれない。しかし、これにはカラクリがある。任務に就いている三分の二の内三分の一は砦勤務となっている最前線詰め番だからだ。

 しかも、残る三分の一の内一部は砦詰めの交代に向けて移動中だったり、休みで鈍った感覚を取り戻すべく外に演習に出ていたりと様々な理由で実際にイスクードで配置についているのは全体の十分の一程度でしかない。

 当然、初めてイスクードに来た頃は真面目な者は不安視するし、場合によっては上に上申する者もいる。

 かくいうマルケスもその一人だったが……もう慣れた。

 実際問題として、何百年も万が一がおきていないのに、この慣習を止めるとなると色々と影響が大きすぎる。

 ましてや、余所の領地の事だ。貴族だとしても余所の領地に干渉するのは、いや、貴族だからこそ干渉はご法度だ。

 そんな事をつらつらと考えながら、早く交代の時間にならぬものかと考えながら、目覚まし代わりに城壁上の一角にある詰め所の外へと出る。

 未だ寒さの残る外気に触れ、目が覚めてくる。

 

 「おや、どうされました?」

 「いや、ちょっと中にいると眠くなってきてな」


 部下の兵士のまとめ役が声を掛けてくる。

 

 「成る程。まあ若い分何とかなりますって」


 自分は年くってから徹夜が辛くなりましてなあ、そんな風におどけて言う彼に笑顔を返しながら相槌を打つ。

 一部の傲慢な貴族の子弟辺りはこうした熟練兵士にも傲慢な態度を取る者がいるようだが……大抵そんな奴は長生き出来ない。別に下手な事をせずとも、戦場で熟練兵士のサポートをまともに受け入れず、受けられなければ単なる小競り合いでも普通に二度三度もあれば死ぬ。

 戦場とはそんなものだ。

 無論、忠告はされる。それで渋々でも行動を改めようとする奴はある程度フォローも入るし、まだまともな頭を持ってればその辺で気づいて行動を改める。誰だって死にたくはないのは同じだ。馬鹿は死ななきゃ直らない、そんな奴だけが本当に死ぬ。

 長くなったが、気晴らしにはちょうど良かった。

 そう思ったが急に兵士の……ソルダドの顔つきが変わった。


 「……どうした」

 

 この顔には見覚えがある。戦場……危機が迫った時だ。

 だからこっちの声にも緊張が混じる。


 「森、何かきます」

 

 急ぎマルケスも森に視線を向ける。

 だが彼にはよく分からない。ソルダドの熟練の目が何かを捕らえたと理解しても彼には何が異常なのか分からない。けれども彼だからこそ出来る事もある。急ぎ全員に集合の合図を出す。鐘を鳴らしたり、笛を吹いたりはしない。誤報という事もあるし、そもそも街が寝静まっている時間に確定する前に鳴らすのは非常識だ。どのみち全員が城壁の上にいるはずなので光で合図を出す。

 集まれ、の光を受けて兵士達がぞろぞろと集まりだすが……今回に限って言えば即、鐘を鳴らすべきであった。もっとも後知恵の類だが。


 「隊長!!」


 突如、ソルダドが大声を上げる。

 どうした!と声をかけ走りより、ソルダドが示す方向に視線を向けたマルケスは……絶句した。

 そこにいたのは……。


 「魔族!?しかも軍勢規模、だと!?」


 多数の魔族よりなる軍勢だった。

 それが森の中から次々と出てくる。


 「国境は何をしていた!!」

 「隊長!!今はそれどころじゃありません!!」


 既に別の場所でも気づいた所があったのだろう、鐘が鳴り始めていた。 

 そうだ、それどころではない!自分は都市全ての防衛を考える役目を負っているのではない。今はここの、城壁の一角の警備を担うだけ。けれども、そんな端切れの仕事を全力でこなしてこそ、そうした者がいればこそ全体が円滑に動くのだと知っていた。

 

 「武器庫から矢を出すぞ!!伝令も出せ!!」


 夜明け前、朝早い者達がもうじき一斉に起き出そうとする時間。

 それだけに鐘が鳴ったとてすぐに動き出せる者は少なく、また全体が動き出すとなれば上に伝令が走り、上が魔族の大規模攻撃を知った上で命令を下す必要がある……それにはどうやった所でそれなりの時間がかかる。それまでは何とか現状の兵力+αで支えなければならない。

 自分自身を省みて、おそらく殆どの騎士も即座に駆けつけられるような用意を、一応規則では鐘が鳴って半刻以内に必要部署に駆けつける事になっているが……そんな準備万端に装備衣類を整えている者などどれだけいる事か……強い焦りに突き動かされるように、眠気の吹き飛んだ頭でそんな事を考えながら部下達と共に城壁内に設けられた武器庫へとマルケスは走り出した……その背後でソルダドが険しく、そして苦い顔をしている事に気づかず。


~~~


 「矢はどうした!?」


 矢が納められているはずの武器庫。

 普通に射る弓矢だけではなく、城壁に固定された大弩の矢なども納められたはずのそこを管理する老兵に急を告げ、扉を開けさせ……けれどもそこにあったのは空に近い倉庫の中身。そう、本来なら必要な各種の武器や手入れ道具、予備の品などで山積みになっているはずのそこはガラン、としていた……。そこには予想の一割にも満たない僅かな量が古ぼけた箱に収められて佇んでいるだけだったのだ。

 もしや、横流しされたのか?

 そんな考えが頭に浮かぶ。マルケスの頭にそんな考えが浮かぶがその答えは横のソルダドから与えられた。


 「まあ、無理もねえ話ですや……これもある意味横流しっちゃ横流しの結果ですかなあ……」

 「……どういう事だ。何か知っているのか?」

 

 厳しい視線で聞いてみれば、返ってきたのは想定外の内容。砦が小競り合いで消耗が激しかった時とかに緊急でここから出してきたのだという。


 「無論、出した分は補充の申請が出されてきやした。けれど、急ぎではないからって後回しにされ続けてきたんでさあ」

 「馬鹿な……ここは最前線を支える重要拠点だろう……?」

 「ええ、そうです……何百年も、この都市が築かれてから一度も戦場になった事のねえ最前線ですが」

 

 ぐっ、とソルダドの言葉に唇をかみ締めるしかなかった。

 確かにそうだ。

 世の中どこだって予算というものがある。彼のような小隊の担当でも武器などが損耗すれば必要な書類を出し、補充を行う必要があるが、それでも全てが認められる事はまず、ない。それ故に足りない分は自分の財布から出したり、或いは書類で最初から多めに申請したりするのだ。

 気の緩みと言えばそれまでだが、確かにイスクードが建設されてからここが戦場になった事など一度もない。それならば最前線の砦を優先……そんな考えに至ってもおかしくはない。今、この時、この状況では慰めにもならぬ話だが。

 そうして、後回しにされ続けてきた結果イスクード全体がこんな有様。一回一回の補充の申請額は少額でも巨大なイスクードという都市全てを満たすだけの大弩や弓の矢となれば相当な額になる。間違ってもポンと出せるような金額ではない。結果として、更に後回しにされるという悪循環。

 それでもここはまだマシなのだという。


 「どういう事だ?」


 マルケスの問いに返ってきたのは救いようのない現実だった。

 矢の補充のみならず故障などによる修理も似たり寄ったり。

 場合によっては大弩の弦が切れたのに新しい弦が補充されずにそのままとか、床に固定された回転機構が故障して一方向に固定されたまま動かないもの、酷いケースだと前線で壊れた大弩の補充として、丸ごと外して持っていかれた場所まであるという。


 「なんて事だ……」


 それではどうにもならないではないか。

 空を飛ぶ魔族など魔族には特殊な能力を持つ者も多い。彼らを防ぐにはどうしたって弓矢が必要なのだ。魔法だけではすぐに尽きる。そもそも、大規模な魔法が使える者などごく一握りに過ぎない。


 「どうなるのだ……」

 「……おそらく、どうにもならねえでしょう」


 結果から言えばその通り、どうにもならなかった。

 迅速に城壁の一角を制圧した魔族はそこから各所へと浸透を開始。早々に一番魔族領側から遠い故に一番装備の持ち出しが激しくまともな防備の残っていなかった西門が早々に陥落。人族側の一大拠点であったはずのイスクードは夕方までに降伏したのである。

 ……そして、イスクードを制圧した魔族はイスクード駐留騎士団のみならず在住の者達も全て追い出した。

 許されたのは人一人が背負えるだけの荷物だけ……。

 抗議した者もいた。だが、魔族側はにべもなかった。 

 騎士である自分達が追放されるのはやむをえない。だがせめて、女子供ら戦場に関わりのない民は許してもらえぬだろうか?

 そう頭を下げて懇願した騎士長に魔族側の将はこう告げたという。

 

 『先代魔王の御世において、魔王様は人側にも慈悲をかけ、歯向かわぬ限りそのまま住む事を許し、財も税を納める限り剥奪しなかった。だが、魔王が討ち取られたと知るなり、人族側は掌を返し、結果多数の魔族が人族によって惨殺された――貴公らが再び剣を持って押し寄せた時、もし魔族が敗れた時誰も同じ事をせぬと誓えるか?お前達の見方では魔族に対する抵抗が成功したのだろうが、我々から見れば薄汚い裏切りに過ぎぬ。我らは忘恩の輩である人族を許して、同じ轍を踏むつもりはない』


 人側にとっては耐え続けて、遂に反攻の機が熟した時一丸となって戦った、そんな話も魔族側から見れば裏切られたという事。

 それ故に民草も全てイスクードから追放された……。

 そして、彼らの実に半数以上が野に屍を晒したのである。 

 ある大商人の中には背負えるだけの財宝を担いだ者もいた。だが、当然のように隣街まで辿りつく前に飢え、折角持ち出した財宝を差し出して食料を請い、水を請い――最期は飢えて死んだ。

 所詮人が馬車も使わず背負えるだけの荷物など高が知れている。

 誰もが余裕などなかったのだ。

 ましてや近隣にはイスクード以上の都市など存在しない。次の街へと辿り着いても、全員の腹を満たせるだけの食料などある訳がなく、次に食料をどこで得られるか分からない……少しでも頭の働く者はそれを理解し、そんな中で自分の食料を単なる財宝で売ってやるなど、目先の欲に目の眩んだ馬鹿か善意に満ちたお人よしぐらいのものだった。

 結果から言えば実際にそうなった。

 やがて食料の不足した者はまだ残る者から奪おうとし、或いは薬がなく倒れ、その死体が病を運び……次の街、また次の街と全てを受け入れる余裕などあるはずもなく、ましてやイスクードが陥落した今、食料を節約し、閉じこもらねばならぬのは彼らも同じ。ごく一部の親類縁者がいた者が受け入れられたぐらいで、他の者はひたすらに歩き続けるしかなかった。

 

 マルクト達騎士も同じだった。

 いや、それどころか役立たず、彼らが守れなかったせいで自分達はこうなった――次第に募る不満からそうと見られた騎士達は格好の恨みの対象となった。

 場合によってはおそらく複数の人間に惨殺され、全身の肉を削がれた無残な騎士の遺体が見つかった事すらあった。……飢えが発生していたその状況下でその肉がどうなったのかなど考えたくもない。

 結局、騎士達で本当に最後まで生き残って辿り付けたのは僅かな者だけ……。

 マルクトはその幸運な一人だった。

 

 幸いな事に魔族達はそれからすぐに周囲に侵攻を開始する事はなかった。

 未だ頑迷に抵抗している魔族本国とイスクード間の残存砦や、魔族にとっても奇襲だった為にあちらこちらに無理が生じていたなど細かなものはあっただろうが、根底にあったのは他ならぬ人族の怠慢と冷徹な計算だった。

 何しろ、イスクードより先にはまともな軍事拠点となりうる都市も砦も殆どない。

 それは人族の油断と怠慢の結果ではあったが、魔族にとっても攻め寄せる時はいいが、反撃を受けた時、それを受け止め防ぐ足場となる場所がないという事でもある。

 ならばまずはイスクードをしっかりと掌握し、体勢を整えた上で改めて動いても遅くはない。誰かがそう考えたのだろう。

 どのみち今代の魔王がイスクードまでを掌握すれば、それだけで人族側は大変不利な状況に陥る。

 何しろ、この数百年をかけて延々と築き上げた防衛線が全て魔族に奪われてしまうのだ。改めてイスクードの前に防衛線を築くにしても、金も物も人もどれだけかかるのか……為政者や官僚は誰も考えたくないだろうが、絶対にやらねばならない、という現実が立ちはだかっていた。


~~~


 そして、ようやく人族側はここに戻ってきた。

 イスクード周辺はほぼ制圧された。

 何とか必死の防衛線を行い、複数の都市と住民を使い捨てにし、ようやく時間を稼いで野戦陣地とはいえ防衛線を築き上げた。そこには長年森を使って防衛を行ってきたエルフ、山や丘といった大地を用いて防衛線を築き上げてきたドワーフといった種族の助けも借りている。

 正直に言えば、未だ完全というには遥かに遠い。

 けれども、完璧を期していては幾ら時間があっても足りぬ。……勇者が選抜された事で、人族側は遂に反攻を決意したのだ。


 「これより、作戦を開始する!!」


 マルクトの宣言が攻守を逆としての新たなイスクード攻防戦の開始を告げた。


 

過去の光景

こうして人側の重要拠点は陥落し、一方で魔族は一気に攻め込みませんでした、攻め込めませんでした


実はイスクード攻略に参加した魔族達はハイになってません

なぜなら、人族の領域なので結界陣がないから

攻め込んだ方が冷静になれるという状況だったりします

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