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プロローグ
物書き初心者ですが、少しでもお楽しみ頂けたら幸いです。
※一部残酷描写がありますため、苦手な方はお避けください。
虫の音一つ聞こえない深夜のとある教会の礼拝堂。
ステンドグラスに僅かな月明かりが滲む中、一人の女性がキリスト像の前に跪き祈りを捧げる。
「天にまします我等が父よ―――」
歳の頃は10代後半だろうか。
シスターのお仕着せを一分の隙も無くその身に纏い、胸元に下がる十字架を額に当てるその姿は、絵画の題材になりそうな程清き美しさに満ちている。
少女は開いていた聖書を数節唱え終わると、おもむろに顔を上げる。
「もうそんな時間?」
「ああ。『お仕事』行ける?」
振り返れば、いつからそこにいたのか、一人の少年が礼拝堂の扉に凭れていた。
「ええ。問題無いわ」
少女は聖書を閉じると、キリスト像を仰ぎ見、一礼する。
「今宵も汚れし魂を御元にお還しいたします」
唱える声に表情はなく、ただただ美しい。
顔を上げた時、手にはいつの間にか、聖書ではなく二丁の拳銃が握られていた。
「行くよ、ヒナタ」
「ええ、ヒカル」
―――これが全ての始まりだった。
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