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第97話:リエルの覚悟

 上空での戦いは、熾烈を極めていた。 黄金の飛行戦艦『クイーン・リエル号』は、天使の大群による光の雨に晒され、満身創痍となっていた。


 ドガァァァァァンッ!!


 右舷の装甲板が吹き飛び、黒煙が上がる。 自慢の金貨弾幕も尽きかけ、魔導シールドも限界を迎えている。 それでも、船は堕ちない。 艦橋に仁王立ちする一人の女性が、それを許さないからだ。


『撃てェッ! 一歩も退くんじゃないわよ! 私の船が、たかが鳥人間に負けるもんですか!』


 リエルがマイクに向かって叫ぶ。 彼女のドレスは煤け、自慢の縦ロールも乱れている。 だが、その瞳だけは、どんな宝石よりも強く輝いていた。


『警告。対象の脅威度を上方修正。優先排除目標に設定』


 上位天使が無慈悲に告げる。 地上にいた天使たちの半数が空へと舞い上がり、リエル号へと殺到する。 ただの陽動ではない。彼女を「明確な敵」として認識し、潰しにかかったのだ。


「リエル! もういい、離脱しろ! このままじゃ撃墜されるぞ!」


 俺は通信機に向かって怒鳴った。 彼女は民間人だ。これ以上巻き込むわけにはいかない。


 だが、リエルは鼻で笑った。


『お断りよ。……言ったでしょ? これは私の「賭け」だって』


 モニター越しの彼女は、どこか寂しげで、けれど晴れやかな笑みを浮かべていた。


『私、わかってるのよ。……貴方の隣に立つのは、私じゃないってことくらい』


 彼女の視線が、俺の腕の中にいるリリに向けられる。 カジノでのポーカー。そして、この旅路。 絶対強運を持つ彼女が、どうしても勝てなかった相手。 そして、ジンが心から大切にしている存在。


『悔しいけど、完敗よ。愛の深さも、覚悟もね』


 リエルは唇を噛み、そして顔を上げた。


『だからこそ! 私の恋は叶わなくても……せめて二人の恋くらい、私が守らせなさいよ! 恋敵ライバルに塩を送るなんて趣味じゃないけど、貴方たちがバッドエンドになるのはもっと許せないの!』


 涙交じりの叫び。 それは、カジノの女王としてのプライドと、一人の女性としての意地だった。


『総員、退避! ここからは私一人でやるわ!』


 リエルが船の全制御を自分に集中させる。 魔力炉が暴走寸前まで出力を上げ、船体全体が黄金のオーラを纏い始めた。


『私の全財産、全魔力、そして私の「運」の全て! この一撃にベットするわ!』


 彼女の【絶対強運】が発動する。 それは自分を守るためではない。 確定した「死の未来」をねじ曲げ、ジンたちの活路を開くための一点突破。


「リエルさん……!」


 地上で、ティアが杖を握りしめて空を見上げていた。 彼女の目にも涙が溢れている。 だが、彼女は泣いているだけではなかった。


「私も……私も賭けます! 聖女の祈りを!」


 ティアが杖を掲げる。


「奇跡は、待っているものじゃありません! 自分の手で、無理やり起こすものですッ!」


 彼女の【確率乱高下】が炸裂する。 天に向かって放たれたデタラメな魔力が、リエルの【絶対強運】と共鳴し、化学反応を起こした。 「100%の固定」と「測定不能のバグ」。 本来なら相容れない二つの力が混ざり合い、天理すら計算できないカオスを生み出す。


『いっけぇぇぇぇぇぇッ!!!』


 リエル号が、流星となって突っ込んだ。 目標は、上位天使が展開する絶対防御結界――ではなく、その真下にある「王都の大地」そのものだ。


 ズガガガガガガガガガガッ!!!!!


 黄金の船首が音速を超え、大地を貫く。 本来なら地表で砕けるはずの船体が、ティアのバグとリエルの強運によって「物質透過」と「衝撃増幅」の奇跡を起こし、地層を紙のように引き裂いていく。


 ズドォォォォォォォンッ!!!!!


 地下空間の天井が崩落した。 降り注ぐのは岩塊だけではない。黄金の船体から放たれた膨大な魔力の奔流が、光の滝となって地下聖堂へと雪崩れ込んだのだ。


 その直撃を受けたのは、楔を守っていた幾重もの防御魔法陣。


 パリィィィンッ!!!


 世界を隔てる壁が、物理的な質量と魔力の暴走によって粉砕された。 上位天使が驚愕に動きを止める。 頭上から差し込む光が、俺たちの目の前に一本の「道」を作り出していた。


「……道は開いたぞ、ジンッ!!」


 遥か頭上、崩れた天井の向こうから、ボロボロになったリエルの叫びが届く。 船は大破し、地上に不時着したようだ。だが、彼女は勝ち誇っていた。 自らの全てを賭けた大博打に、勝利したのだ。


「ああ。……受け取ったぜ、その勝ちチップ!」


 俺はリリを抱き直した。 彼女の体はもう、自力で立つことすらできないほど希薄になっている。 だが、その瞳にはまだ光が宿っていた。


「行くぞリリ! 最後まで、俺が連れて行く!」


「……はい、ジン様……!」


 俺はリリを強く抱きかかえると、前を向いた。 仲間たちが空を割り、大地を穿って作ってくれた、最初で最後の好機。 これを逃せば、次はもうない。


 俺は、瓦礫と光が降り注ぐ中、無防備となった最後の楔――『光の柱』へと向かって、全速力で駆け出した。


お読みいただきありがとうございます。


リエルの覚悟、いかがでしたでしょうか。

「恋には負けたけど、勝負には勝つ」。

金貨の雨を降らせ、船ごと突っ込む彼女の生き様は、誰よりも「女王」でした。


ティアとの共鳴カオスも合わさり、ついに最後の道が開かれました。

残すは、光の柱に潜む「最後の楔」のみ。


ここまでの「王都決戦・逆転劇」を読んで、

「リエル姐さんカッコ良すぎる!」「展開が熱い!」「早くリリを助けて!」

と思っていただけましたら、


ページ下の【★★★★★】評価と**【ブックマーク】**で応援していただけると、

最終回へ向けての執筆スピードが加速します!

(※皆様の応援が、ジンの最後の作戦を支えます!)

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