表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

79/115

第79話:第一の天の楔:火山の洞窟

 ジャックから提供された裏ルートを通り、俺たちは『灼熱の洞窟』の深部へと侵入していた。 そこは文字通り、地獄の釜のような場所だった。


 ゴオォォォォ……ッ!


 眼下には煮えたぎるマグマの海。 吹き上げる熱風は、呼吸をするだけで肺を焼きそうだ。 本来なら生身の人間が立ち入る場所ではない。


 だが、俺たちは平然と歩いていた。 ……いや、「平然」というのは語弊があるかもしれない。精神的にはかなりキツい。 なぜなら――


「暑くはないが……この格好はなんとかならんのか」


 グレンが情けない声を上げる。 俺たちが着ているのは、ヴォルグが徹夜で開発した『全環境対応型・耐熱防護服』だ。 機能は完璧だ。数千度の熱波を遮断し、毒ガスも中和してくれる。 問題は、その見た目だ。


 全身を覆う銀色のピチピチした素材。 頭には金魚鉢のような球体のヘルメット。 そして背中には、冷却用の魔石が埋め込まれた箱型のタンク。 どう見ても、三流劇団の道化師か、深海の奇妙な魚人のようだ。


「ヒャハハハ! 機能美だ! 文句があるなら裸で泳げ!」


 先頭を行くヴォルグだけが、このダサいスーツを誇らしげに着こなしている。


「うぅ……恥ずかしいですぅ……」


「拙者、この姿で敵に会ったら切腹しかねんぞ……」


 ティアとカエデが顔を赤くして縮こまっている。 リリだけは、「ジン様とお揃いです!」と嬉しそうにしているが、その美的感覚は少し心配になる。


「無駄口を叩くな。そろそろ最深部だ」


 俺はモノクルの解析モードを切り替えた。 熱源反応の向こう側に、異質な魔力反応がある。 天の楔だ。


「見えたぞ。あれだ」


 広大な空洞の中央。 マグマの海から突き出した孤島の上に、それはあった。 高さ十メートルほどの、純白の柱。 周囲の溶岩の赤とは対照的な、無機質で神聖な輝きを放っている。 あれが、天理が地上を管理するために打ち込んだ楔の一つ。


「へっ、あんな棒切れ一本で世界を縛ってんのかよ。生意気な!」


 グレンが大剣『真・岩砕き』を構え、孤島へと続く細い石橋を渡ろうとする。 その時だった。


「あ、あのっ! 私が浄化魔法で結界を弱めます!」


 ティアが名誉挽回とばかりに前に出た。 だが、その足元には「偶然」浮き上がっていた石畳の突起があった。


「あっ」


 ティアの足が引っかかる。 彼女の体はバランスを崩し、石橋から投げ出された。 下は煮えたぎるマグマの海だ。


「きゃあああああっ!?」


「ティア!」


 俺たちが手を伸ばすが、間に合わない。 ティアの体が重力に従って落下していく。 このままでは、耐熱スーツごと溶解して消滅だ。


「みゅッ!!」


 その時、白い閃光が走った。 ラクだ。 ラクは俺の肩から飛び出すと、空中で体をゴムのように伸ばした。 ビヨーンと伸びた白い毛玉が、落下するティアの足首に巻き付く。


「みゅ〜〜〜〜ッ!(ふんぬっ!)」


 ラクは石橋の欄干に尻尾(?)を絡ませ、必死に踏ん張った。 バンジージャンプのように空中で停止するティア。 彼女の顔の数センチ下には、マグマが跳ねていた。


「ひぃぃぃっ! あ、熱いぃぃ!」


「引き上げろ!」


 グレンが慌ててラクの体を掴み、怪力で引き戻す。 なんとか石橋の上に生還したティアは、腰を抜かしてガタガタと震えていた。


「し、死ぬかと……死ぬかと思いましたぁ……」


「お前な、大人しくしてろと言っただろ!」


 俺は怒鳴りつけたが、心臓はまだ早鐘を打っていた。 本当に、こいつの『確率乱高下』は心臓に悪い。 ラクがいなければ即死だった。


「みゅヘン!(かしがないとだめだな!)」


 ラクがティアの頭をペシペシと叩く。 ティアは「うぅ、ラク様ぁ……」と平伏している。


「……気を取り直すぞ。ヴォルグ、やれ」


「おうよ! 特製爆弾のプレゼントだ!」


 ヴォルグが楔の根元に魔導爆弾を設置する。 俺たちは安全圏まで退避した。


「起爆!」


 ドゴォォォォォンッ!!!!!


 洞窟全体を揺るがす爆発音。 純白の柱が根元からへし折れ、マグマの海へと崩れ落ちていく。 その瞬間、周囲の空間に漂っていた「監視されているような圧迫感」が、フッと消滅した。


「……やったか」


 俺はモノクルで確認した。 このエリアを支配していた天理の干渉波が消失している。 第一の楔、破壊完了だ。


「へっ、ざまぁみろだぜ!」


「まずは一歩、ですね」


 グレンとリリが笑みを浮かべる。 だが、俺は気を緩めなかった。 楔を破壊したということは、管理者側にこちらの位置と意図が完全に露見したということだ。


「長居は無用だ。次が来るぞ」


 俺たちは崩れゆく洞窟を後にし、次なる目的地へと急いだ。 世界中に打ち込まれた楔は、まだ残っている。 俺たちの反逆は、始まったばかりだ。


最後までお読みいただきありがとうございます!


・全身銀タイツの変態集団(主人公一行)

・マグマダイブするティア

・それを救う伸びる毛玉ラク


シリアスな任務のはずが、絵面がひどいことになっています。

ですが、第一の楔は見事に破壊完了です。


しかし、脱出した直後に「最悪の待ち伏せ」が。

次回、ティアの真骨頂バグが炸裂します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ