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プロローグ 『始まり』
ーー痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い
生暖かい風が吹き、あたり一面が支配される。
体中から大量の汗が流れ、感じる痛みがこれは夢でもなんでもなく現実だと物語っていた。
腕はあらぬ方向に曲がり、足は食いちぎられ、腹には大きな風穴があいていた。
彼はそんなどうしようもない局面を迎えていた。
これが物語であったならば誰かが助けに入り、一命をとりとめ、そこから素敵な物語が始まったかもしれない。
だが現実はそう甘くない。体からは大半の血が流れ落ち、命の灯も消えかかっていた。
ーーこんなところで!!
彼はそう思い無情にも散っていく自らの命を眺めることしかできなかった。
『ーーーーーーーー』
今もなお、体を貪る音が響く中にノイズのようなものが混じった。
すでにこの身にはない腹をえぐられるような感覚が一気に広がる。
ノイズの正体はわからない。
だが彼の耳には確かにこう聞こえた。
『条件達成を確認、速やかにロードを実行。』
その瞬間、彼ーーイトウ ユウキは世界から姿を消した。