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ひきこもりくん、先生が来ましたよ  作者: 風呂上がりの熊


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授業14 いってらっしゃい

 翌日、俺は朝早くに目を覚まし、リビングへ向かう。


「まだ誰も起きてないか」


 リビングにつきキッチンの方まで歩く。

 食器棚からコップを取り、冷蔵庫の方へ。

 冷蔵庫からは牛乳パックを取り出して、溢れないようにそっと中身をコップに注いだ。

 薄暗い部屋では冷蔵庫の明かりはちょっと眩しい。

 牛乳パックを冷蔵庫に戻してから扉を閉じ、俺はその眩しさから逃れた。

 暗いと牛乳ってちょっと灰色に見えるな。

 なんて思いながらコップの中身を飲み干した。


「んっ、んっ、ぷはぁ」


 空になったコップを軽く濯ぎ水を入れてうがいをする。


「ぺっ」


 唇についた水を手の甲で拭って俺は呟く。


「よし、もう一回寝よう」


 そう決めて部屋へ戻ろうとリビングを出たところで、母さんと鉢合わせた。


「母さん、起きるの早いね」

「ふふっ、りっくんこそ早いですね。なにか用事ですか?」

「ううん。たまたま早く目が覚めちゃっただけ。母さんの方こそ白衣なんか着てどこかに行くの?」


 俺は寝間着姿のままだが、母さんはスカートタイプのスーツの上から白衣を羽織っている。


「これからお仕事です」


 母さんは肯定し、後ろに持っていたスーツケースを俺に見せた。


「えっ、もうイギリスに戻るの?」

「ええ。まだ向こうでの仕事が残っていますから」

「……そっか」


 こんなに少ししか一緒に居られないなんて残念だ。

 その気持ちが顔に出ていたのか、母さんは優しく俺の頭を撫でてくれ、続けて言葉を紡いだ。


「今回の帰国で私もりっくんや青ちゃんと暮らしたくなりました。だから残っている仕事を終わらせてすぐに帰ってきます。だからそんなに寂しそうにしないで下さい」

「わ、わかった」


 高校生にもなって母さんから頭を撫でられるのは少し照れくさかった。


「いってらっしゃい」


 俺の言葉に母さんは穏やかに微笑んで返事をする。


「ふふふ。はい。いってきます」


 そして母さんは「青ちゃんにりっくんのことお願いしますと伝えて下さい」と言い残し、俺の頬にキスをして旅立っていった。

 母さんは海外生活が長すぎてスキンシップが激しくなっているな。


「ふぁあ、やっぱりもう一回寝よう」


 欠伸が出たので、俺は予定通り自室に戻りもう一度眠りについた。


 ●●●


「……ん。……きろ。……おい……ん。起きろ」


 激しく体を揺さぶられ、俺は目を覚ます。


「んんっ……。なに?」


 目を擦りながら、俺は自分の体を揺さぶっていた犯人に尋ねる。


「り、鈴! 大変なんだ! 早希さんがどこにも居ないんだよ!」


 犯人は焦った様子で俺の肩を掴み、前に後ろにブンブン揺さぶった。


「ううぇっ」


 寝起きでいきなり頭を揺らされ若干気持ちが悪い。


「なあ鈴! どうしよう! 早希さんちっちゃくて可愛いから誘拐されたんじゃ!」

「お、落ち着いて、落ち着いてよ青姉。うぷっ」


 俺は体を揺さぶっていた犯人にである青姉に落ち着くようにお願いする。

 青姉は俺が吐きそうになって口を押さえているのを見て我に返ったのか、揺さぶるのをやめてくれた。


「わ、悪い」

「だ、大丈夫だから、母さんがどうしたの?」


 俺は呼吸を整え仕切り直す。


「さ、早希さんがどこにも居ないんだよ!」


 青姉がぐっと顔を近づけて言う。


「あ、青姉! 顔近い!」


 俺が少し顔を前に倒せば唇同士が触れ合ってしまいそうだ。


「だ、だって早希さんが」

「だ、大丈夫だよ。母さんは仕事をしにイギリスに戻っただけだから」

「えっ、もう?」


 青姉は眉を八の字にして沈んだ声を出す。青姉も俺と同じ気持ちらしい。


「でも、すぐに仕事終わらせて帰ってくるとも言ってたよ」


 青姉に母さんの残した言葉を告げる。


「そっか」


 それを聞いて青姉は嬉しそうに微笑んだ。


「あっ、それと青姉にりっくんのことお願いしますって伝えてって言われた」


 俺は母さんの伝言を思い出し、青姉に伝えた。


「そっか。……早希さん、わかりました。鈴のことは私に任せて下さい!」


 青姉は虚空を見てぐっと拳を握る。


「そうと決まれば早速勉強だぁ!」

「へっ、ちょ、うわぁ!」


 やる気満々になった青姉は握った拳を突き上げながら、もう片方の手で寝起きの俺の手を無理矢理引っ張った。

 俺は引き摺られながら青姉の部屋まで連行される。

 この後、めちゃくちゃ勉強させられた。

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