5話
「育ての親だからかね、二人とも、仲がいいねえ」
「まあ、四六時中行動を共にしているし、お互いの好みもわかっているから、仲はいいが・・・」
女がにこにこと楽しそうにルエラの顔を覗き込みながら言うのに、怪訝そうに返す。
だってね、と指を指した。
「お二人さん、ずっと手を繋いでいるだろう。うちの子がそうだが、お嬢ちゃんぐらいの年頃になると、思春期なのか男の人と手を繋ぐのは恥ずかしいというからねえ」
串肉を食べている時も、交換した時も離れなかった手を揶揄われたらしい。
それに対して、ルエラは頭を振る。
「いや、これは」
ルエラを見下ろすルカをじっと見上げ、逡巡しる素振りを見せたがすぐに言葉を繋いだ。
「師匠は興味のある本や物を見るとふらふらといなくなってしまうのでな、最初から手を繋いでいればはぐれる心配がないのだ」
「そんな理由だったの?」
初めて聞いた理由に、ルカは衝撃を受けた。効果音にするならガーン、だ。
確かに、ルカは普段しっかりとした性格で面倒見がいいけれど、出先に限って興味を持ったものに対して気ままにふらふらと彷徨う悪癖がある。それも割と無自覚で行動するものだから、ルエラを保護してすぐの頃はよくはぐれてしまっていたほどだ。
それが何時の頃からか手を繋ぎたいと手を伸ばしてきたことから、町へ赴く際は手を繋ぐことが当たり前となっていたのだがー--まさかの確信的な行動だったとは。
自分の行動に反省していると、ルエラが手を引いて興味を引いた。その顔にはいたずらっ子のような笑みが浮かんでいる。
「ですが、私は師匠のそんな勤勉な姿勢も尊敬しているので。今まで通り、好きに歩いてもらって構いません。どこまでもついて行きますから」
十歳の少女だというのに、その表情は雄みが強い。
絶句して黙り込んだルカに対して、女はあらま、と頬を赤く染めながら感心した。
「なんともまあ・・・人たらしな子だねえ。うちの旦那よりも男前じゃないか・・・」
「・・・・・・私も常日頃感じていますよ・・・」
実は、自分よりも精神年齢はうえなんじゃなかろうか。
取り合えず、話を逸らす意味合いを込めて、ルカは味付けの違う串肉をルエラに買い与えた。