4話
オノール国の大教会へ続く大通りには、様々な国や地域からの珍しい食材や布織物などが並ぶ店が並んでいて、その中には聞きなれない食べ物を提供する屋台もあり、ルエラの希望で食べ歩きをすることにした。
スパイスのきいた具の入った揚げ物や、甘めの皮に包まれたゴロゴロとした具の入った蒸し物、目移りするものばかりだったが、直感で店を選ぶ。
最初は長い串四角く切った赤身肉を幾つも刺した串肉がいいと、二人そろって並んで、それぞれ塩とタレを選んだ。
ルエラが頬張ったのは甘めのタレに香ばしい焦げ目のついたもので、服につかないように気を付けながら大きく口を開く。
「・・・!」
肉汁が溢れる柔らかい肉とタレが合わさった串肉は文句なしに美味しい。ルエラはタレには何を入れているんだろうと考えながら二口目を口に入れる。
「ルエラ、こっちも食べるかい?」
「ん・・・、はい。師匠も、よかったら」
差し出された串を自分のものと交換し、匂いを嗅いで口に入れる。複雑な複数のハーブの匂いが口いっぱいに広がり、尚且つ肉汁をあっさりさせてくれる。此方のほうが好みの味付けだ。
「師匠、このハーブの塩、美味しいですね」
「だね。帰ってから調合してみようかな・・・」
なにやらやる気を出しているのを見て、近いうちにこれが食卓に並ぶのだろうな、とほくそ笑んだ。別に食わず嫌いではないが、やはり美味しいものは食が進むというもので、同年代と比較すると小柄なルエラを心配して、好みのものや気に入った発言をしたものを多めに作る傾向にあった。
そのまま食べていいよ、とルカに頭を撫でられたので、ハーブ塩の串肉を黙々と食べる。
その様子を見ていた屋台の店員が、楽し気に笑った。
「いいねえ、お嬢ちゃん。優しいお兄ちゃんじゃないか」
「・・・お兄ちゃん、ではないが」
どういうわけかルカ以外にあまり敬語を使わないルエラは、常の話し方で返答する
「おや、兄妹ではないのかい?」
そういえば師匠|って言ってたっけかね、首を傾げる女に、こくりと頷いて返す。
「戦争で孤児になったのを拾ってもらって育ててもらっているから・・・言うなら育ての親だ」
え、っと女が気まずそうに声を上げた。
「そうだったかい・・・苦労したんだねえ。お兄さん、若いのに立派じゃないか」
「いえ、そうでも・・・」
感心する女に、ルカを曖昧に肩を竦めて濁した。
育ての親、でも確かに間違いではないのだが、正しい関係は魔術の師弟である。なんの師弟だと問われると面倒なので言わずにいるが。こういう時、深く口を挟ませない説明をする分、ルエラは口がうまい。
ー--もう少し駆け引きを学んだほうがよさそうだな・・・。
ルカは少々反省しながら最後の肉を飲み込んだ。
途中ですが、ここまで