20話
ルカはパンパンと敢えて大きく手を叩いて、注意を促して方向転換する。
「さて、やることが山積みだね。一つ目、教会に戻って夢に出てきた人物を特定、その背後にいるであろう人物の事の事も同時進行。二つ目、聖女選定の儀式への介入をどうするか。これは一つ目の人物の目的が分からないと判断が難しいから保留。三つ目、入れ替わりをどうするか。これは現状維持にしようか。クリスティーナ皇女の状態的に、難しそうだ。四つ目、ディーウェスはどう対応を取るか。・・・先輩?」
いきなり話を振られたフェリクスが渋面を浮かべた。
「突然振るのか。・・・難しいな。せめて黒幕、と言っていいのかわからんが、謎の人物の目的が分かってからでないと、こちらもどう対応したらいいかわからん」
ルカが頷き、一拍置いて再度、一度だけ手を叩く。
「では、早急に一つ目を調べてしまいましょう。クリスティン皇太子は現状維持。クリスティーナ皇女殿下の身代わりのまま暫く潜入、動きがあったら知らせが行くようにしておきましょう。皇太子には護衛兼世話役が着いてますよね? 私とルエラが幻覚魔術を使用して入れ替わります。それで、内部調査を行います。入れ替わり等の指示出しは、先輩に任せますね。ー--何か質問は?」
にこりと笑うルカに、ふるふると無言で首を振る。謎の威圧感に、口も出せなかったクリスティン、クリスティーナはさておき、フェリクスは疲れたように肩を落とした。横ではルエラが呆れた眼差しで師を仰ぎ見る。
「手慣れている・・・」
「というより、やることに口を挟ませないために一気に言っただけでは。師匠、予定を崩されるの嫌いですしね」
「余計なことを言わないよ、ルエラ」
「いや、皇族三名に意見を仰ぐことなく、勝手な行動に走っている師匠の方が問題では」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
笑顔と真顔による無言の応酬に、フェリクスが間に入った。
「・・・うん、ルカの行動については、今回については不問とするから、お嬢さん、気にしなくていいぞ」
「申し訳ない。師匠には後で私から注意しておくとしよう」
「どっちが師だ・・・」
やっぱり年齢不詳だよな、とクリスティンが改めてルエラの年齢を疑問に思うが、今抱えている問題とは関係がないので気にしないでおくに限る。
方針が決まってからは、流石は国を統べる者。行動が速かった。宰相や軍部長官とは翌日緊急会議ー-ルカは当然のように参加を辞退ー-を開いて現在の状況を周知させることにし、クリスティンに着けていた従者たちはルカとルエラが入れ替わりと同時に影として見れていなかった箇所を埋めることで話が纏まった。
「じゃあ、そろそろ戻ろう。何時でも連絡が取れるように通信用の魔道具を置いていくから、皇太子殿下は腕輪型の通信機を常に身に着けておいてね。ー--じゃあ、フェル先輩、こちらの事は、宜しくお願いします」
「ああ。息子を頼む」
軽い素振りで手を振り転移魔術を複数人で使用する際に限り展開する『門』を潜っていく師に、ルエラが溜息を吐きながらフェリクスにぺこりと頭を下げて同様に背を向ける。その背をクリスティンが慌てて着いて行って『門』が閉じるのを見送ったフェリクスとクリスティーナは、黙って顔を見合わせる。
「なんというか、のんびりとした考えの御方なのですね、大賢者様は」
「・・・まあ、昔から自由な奴ではあったな・・・」
自分の研究に心血を注ぎ、気まぐれに実験宜しく発案した魔術が使える場面ー--戦争地帯に赴いては死者を出さないように気を配りながら蹂躙ー--基、解決に導く様はまるで救世主だと称された。見目麗しい麗しい幼い少年であったことから、猶更崇拝されるようになった。
向けられる崇拝、畏怖、妬み、・・・時には重いと思える程の思慕の念を向けられて、仕舞いにルカは研究を名目に自身で作った塔に籠るようになってしまった。
そんな彼が側に置く、弟子だというルエラ。どうにも立場が逆のように思えて笑いを誘ったが、それにしてもー--。
「あの顔、どこかで見たような・・・」
その小さな呟きを聞く者はいなかった。
盛大に風邪を悪化させたため、更新が・・・




