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19話

室内に沈黙が流れた。

重苦しい空気の中、立ったまま俯いて表情の見えなかったクリスティンが、大きく体を震わせたかと思えば、突如叫んだ。


「こ・・・怖い怖い怖い‼ え、何、聞いただけだけど、鳥肌立ったっ。なにこれホラー展開か何か⁉」

「意味深な内容だな。危険を回避するための内容とは思えんが・・・」

「え、ルエラ、全然怖がってない・・・?」


どうやらホラーに一切の耐性がないクリスティンが恐慌状態に陥った隣で、幼いルエラが顎に指を添えて淡々と熟考する。それにフェリクスと一緒に、やだ、この子冷静・・・と目を向けたが、逆に何だこいつら、と言外に冷たい視線を向けられたことで少し落ち着いた。

ルエラは大したことはない、と緩く頭を振って先程の問いに腕を組んで胸を張る。


「師匠の実験の失敗で塔が爆発することほど怖いことはないからな。大概の怖い話は制作された眉唾が多いし、何を怖がる必要がある」

「「・・・・・・・」」


どれに突っ込んだらいいかわからなかった。

取り合えず、ルエラの不本意ながら恐怖の代名詞となってしまっていたルカは、強引に話題を戻すことにした。


「・・・うん。永遠をもって叶えてやろう、ねぇ。意味深だし、ルエラが見た干渉夢との繋がりが分からないな」

「話題を逸らしましたね。良いですけど。師匠の探求心が止められるとは思っていないので」

「いいんだ・・・」

「うん。それに、最近はスリリングな日常が楽しいと感じるようになったからな。慣れればどうってことはない」


適応能力・・・。親子三人はルエラに憐みの視線を送った。


「取り合えず、皇女殿下の夢に出てきた人物が気になりますね。姿が見えていた男の方、着ていたものはわかるだろうか」

「あ・・・資料で見た物とは違いましたが、オノールの司祭服と似ていたような・・・。薄暗くて、鮮明に見えていたわけではないのですが」


オノールの祭服は、他国の祭服と変わらず、腰ほどまであるローブ状の上着と襟の高い長衣がくっ付いた形状をしているが、左胸に十字架の意匠が刺繍されているのが特徴だ。教皇は金、幹部は銀、役職を持たない信徒は銅色の糸で区別されている。これは、オノールが貿易港として交易が盛んになる前、金属が手に入りにくかった頃に代わりとして衣服に刺繍の十字架を身に着けていた名残とされているが、諸説ある。


「胸に刺繍・・・オノール以外に、この特徴を持つ祭服を使う協会は?」

「ない。少なくとも、私が知る限りでは。・・・協会に戻って、建物の記憶を視た方が早いかなー」

「・・・なんか、とんでもないことを言わなかったか」

「気のせいですよ」


さらっと記憶を辿る術があると白状したが、ルカは往生際が悪かった。


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