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14話

余りにものんびりとした気質のルカに調子を崩されつつ、決まったことが二点。一つは今夜、寝静まった時間帯、空間系統魔術、転移でディーウェスへ向かうこと。二つ目は、それに辺り、東の帝国で使われている式術で皇帝に連絡を入れること。どちらもルカしか出来る者がいないため、その場で作業をすることになった。

国主相手に適当な紙ー--というわけにはいかず、異空間収納にしまってあった上質な紙にルカとクリスティンが連名で手紙を書く。文字に誤りがないか確認をし、直ぐに術式を付与して式として飛ばす。ここまでで僅か30分も掛かっていない単純作業だ。ー--ルカからしてみれば、という前提である。当然、崇拝者(ファン)であるクリスティンは興奮しながら一部始終を凝視していたし、今だ天井裏に潜んだ影たちも、なんだあの術はと、息を吞んで様子を窺っていた。ルエラと言えば、ばれているんだから、出てくればいいのに・・・等と呆れ返っていたのだが、それが仕事だからね、とルカに首を振って口に出すことを止められている。


「さて・・・手紙は送ったから、あとは寝静まるのを待つだけだけど・・・まだ三時間はあるかな」

「そうですね。疲れたから早めに休むと言って、侍女を外に出してしまえばどうでしょうか」

「今までにない行動をしたら不審がられるのでは? 寝ていると勘違いしてくれればいいが、もし誰かが入ってきた時に不在だと、騒ぎになりかねんだろう」

「そんな不躾なことをするだろうか・・・」

「ここは自国ではなく、友好国ではあるが裏がある国だろう。念には念を入れた方がいい」

「・・・君、本当に年齢詐称していないか」

「ない」


疑いの目を向けられるが、スパンと短く切って捨てた。確かに自分は子供らしくはないのだろうが、その大体の原因は師匠と生活しているからだろう、とルエラは客観的に考える。正しくその通りなのだが、話し方や喋る回数の違いから、ルカと似通った性格とは思われないのが現状だ。世知辛い。

諸悪の根源ー--基、ルエラの人格の構成の大部分を占めているルカはというと、そろそろ人が来るね、と扉の方を見て呟いた。


「え、でもカートを押す音がしませんが」

「今、廊下の角辺りにいるよ。・・・さて、私たちは一旦お暇しよう。時間になったら迎えに来るから、準備だけしておいてね」

「は、はい・・・」


呆けてしまうほどあっさりと透視して見せたが、一応高等魔術の一つだ。クリスティンが絶句するのも仕方がない。だがルカから言わせてもらうと、魔術研究を盗もうとする手合いに対処するために、防犯の意味合いで瞳に直接透視の術式を刻んで常時展開しているのだ。魔力を使った形跡も無しに行使するのはお手の物である。

唯一知っているルエラは言うことでもないな、とさっさと茶器を水系統魔術「浄化」で茶器を洗い、一纏めにした。それをルカが異空間収納にしまい、転移陣を展開する。


「じゃあ、また後程。留守に対する対策は後でやるから、皇太子は何もせず、待っていてくれればいいからね」

「くれぐれも何かしようと考えないように」


ルエラにさえ釘を刺され、二人を見送ったクリスティンは、のろのろとした動きで天井裏に潜んだ影に話しかけた。


「俺はそんなに、猪突猛進に見えるんだろうか・・・?」

「・・・・・・・」


影たちは懸命にも無言を返す。冷静な人は、そもそも妹の身代わりとして潜入したりしません、とは、とてもではないが言い辛かったようだ。

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