【絵本原案】天に住む少女
天に住む少女はお花が好きでした。自分の家の花壇に種を植え、雲にじょうろを突っ込んで水を汲み、毎日お世話をしていました。やがて時間が経つと芽が出て生長し、やがて綺麗な花を咲かせます。
「やった、綺麗に咲いたぞ!」
少女はよほどうれしかったのかそれを誰かに見てもらいたいと思いました。そこで少女は何本かの花を花束にして抱えるとそのまま地上へと続く階段に向かいました。
階段の手前には門番がいて少女に話しかけます。
「もしもし、お嬢さん。地上へ行くなら名前が必要ですよ」
「私の名前?」
生まれてから今まで名前の無かった少女は悩みます。でも、名前を持たないと地上へ降りることが出来ません。少女は自分の持っていた花を見つめました。
「私の名前はサクラです」
名前を聞くと門番はそれを持っていた手帳に書き記し、地上へ行く許可を出してくれました。サクラは意気揚々と階段を下りてきます。やがて地上が見えてくると階段が綱っていた場所は何の変哲もない公園でした。
「ここなら人が居るかもしれない」
自分の育てた花を見てもらいたくて、見てくれる人を走っ探しました。するとサクラが持っていた花束から黄金の香りを感じ取り、周囲に合った木々が次々と花を咲かせていきます。
今年の桜前線は少しだけ落ち着きのない少女が、自分の花を見てもらいたくて一生懸命なのかもしれません。