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ある、春の日——。
もうすぐ、桜が咲く日。
仕事の休憩中、何気無く触っていたホログラムモバイルが、真っ白に光った。
それは毎年、仁花が見たがった、真っ白な雪のように光って、溶けるように消えた。
転送受信した蒼の栞と千切れたネックレス。
水色のペンダントトップが、涙のように見えた。
……その日、大世界の人工島は跡形も無く、消えた。
その日以来、俺のジャケットの胸ポケットには、空色の栞と水色の涙を閉じ込めてある。
今、目の前には、俺たちが作ったハイドロレイダーが、巨大猿に襲われ、窮地に立たされているのが見える。
……遂にこの日が来た。
歴史を、繋がりを、思いを……誰かに任せるだけじゃなく、自分の手で掬う日が……
「どんなに離れていても」
未来はわからない。
「俺はひとりじゃない」
ただ、歴史の片隅で、強大な敵にいつか、負けてしまうかもしれない。
でも最後まで!!!
「全部が……未来の糧だ!!!」
……思い出せ!!!幸せを!希望を!!!!!!
「スターライク…………」
「シュウジ!見て!!!」
「えっ!?あ、あれは味方!?」
(蒼の……)
「ダイヤモンドォ!!!!!!!」
「分かんない!でも!シクラメンを狙ってる!!」
「なんか……聞いたことある!この声ッ!!!」
(ハイドロレイダー…………?)
「フリーーーーーーーーーーーーズ!!!!!!!!!!」
「サブローさん!!!!!」
「えっ!?サブロー!?!?」
「すまないシュウジ君!ミカ君!2、3頭凍らせそびれてしまったっ!」
「大丈夫です!実華行くよっ!!!!!」
「えぇ!?うん!」
「「バーキング」」
「「アローーーーーー!!!!!!」」
空みたいな、海みたいな、涙みたいなレイダー……
放たれた氷で敵の全てを凍らせた氷が、薄明光線の下で、砕け散っていく。
それは降らない筈の町に初めて降った、奇跡みたいな雪のように、見えた……




