76
「「サブロー、おめでとー!」」
夜のニュースに、ホーリーチェリーが映し出されていた。
2年前、世界の首都、大世界の人工島に突如出現した8メートルもの巨木。
去年も一昨年も開花はせず、今年も咲かずに冬になったけれど、神聖なその佇まいは大世界の人工島のシンボルとなっていて、夜の天気予報に必ず映っている。
テレビ画面の右上には今の時刻、19:19分。
テレビ横のホロカレンダーには、
1日
小さく、そう浮かび上がっていた。
明日はクリスマス。
サブローの誕生日。
「ごめんね~、明日夜勤だから、今日になっちゃって」
「いいよ、二十歳にもなって当日じゃなきゃとか嫌だとか無いし、それに仁花とハジメの方がめでたいよ。年明け早々、IOPに赴任なんて」
「お正月、一緒に過ごせなくてごめんね」
「いいっていいって。それより、今までありがとう。仁花とハジメのおかげで二十歳になれた。もう、一人で大丈夫だから」
「な!やめなさいよそんなこと言うの。花見には遊びに来なさいよ、絶対。それに来年の誕生日は一緒に過ごすわよ!」
「わかってるって」
四畳半と六畳のこのアパートで、アタシは幸せだった。
サブローを守るために、必死で働いたし、ハジメを支えてきた。
サブローが二十歳になったことが嬉しかった。
◯◯◯おまけトーク◯◯◯
「はい、イチゴ味」
「ん、ありがと」
「シュウジ、好きでしょ。アタシからの誕生日プレゼント。アタシはノーマル、母はアーモンド。で、シュウジはイチゴだ」
「ん。(余るからね、イチゴが)」
「なんと、今年は2箱あります」
「ん。(まぁ今は本当に好きだけど)」
「あ、母は焼きそばパン作るって言ってたよ!」
「ン!やったぜ!!!ケーキもあるんでしょうね」
「ふっふっふ、……たぶんね!」




