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炒飯のお皿を洗って、アタシは冷蔵庫に貼られたサブローの写真を見つめた。
サブローはハジメとアタシの弟だ。
それ以上でもそれ以下でもない。
「仁花、見て、小さい手だね。可愛い」
まだアタシを仁花と呼んでいたハジメ。
小さい頃の記憶。
ハジメが手を伸ばした先には、
小さな妖精のような……
雪の精霊のような、サブローが居た。
「これが弟……?嘘……」
アタシは高揚していた。
生命とAIの混血。人類の偉勲。
これは人類の叡智、Artificial Intelligence of distress《廃哀の人工知能》ではないだろうか。
「……」
小さな妖精は、柔らかい力でアタシたちの手を握った。
「仁花、可愛いね」
「……うん」
アタシはサブローのぽっこりとした温かいお腹に触れた。
「可愛い……」
サブローは、隕石のように強く、不思議な灰色の瞳でアタシたちを見つめた。
「妖精みたいだね。でもほら、口の形とかさ、仁花に似てる」
ハジメが指差した先に、アタシたちと同じ形の口がもぐもぐと何かを呟いていた。
鼻の形が、ハジメに似ている気がした。
灰色の瞳も、不思議に惹きつけられた。
「僕たちと同じ、可愛い子どもだね」
◯◯◯おまけトーク◯◯◯
「ちょ!シュウジ、何やってんの!?」
「怪我した……」
「ガラスが刺さってるじゃん!」
「ガラスを割った上に、転んだ……」
「来て!……いや、歩ける!?」
「歩いて来た……泣いてはいない」
「ハァ!?そういう問題じゃないから!!」
「えっどしたの!?」
「母!!!シュウジが!!!」
「ガラスは……全部取れそう……でも何で?」
「……大丈夫です。遊んでただけ。男子だから傷が残っても大丈夫です」
「ハ、ハァ!?(現代は、自然のままに生きることが倫理だけど……)」
「自然のままに生きるのが男子ですヨ。じゃあまた続き、遊んで来ます」
「いやいや、顔色悪いし!寿命は伸ばせないんだよ!!怪我したら痛いし!休みなさい!!!」
「ギャッ傷口触るのはやめて下さい(泣)」
「なら忘れないで。傷付いたら痛い、傷付いたら休む」
「(泣)早く治してやる……」
「その意気だ、息子よ……」
「(泣)(ピース)」
「(ていうかこんなドジある?……怖かった、けど……いや、笑っちゃうじゃん)ッフ」




