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秋風吹く月夜——。
あの日、守ると言ったシュウジは今コックピットにはいない。
けど、アタシはシュウジの存在を感じていた。
宗ちゃんも血は繋がらないとはいえ兄のような存在だから、アタシのことはよく分かってる。
けど、ここまで動き、想いが通じているのはそれだけが理由じゃない。アタシの知らない所で、二人の会合があったのだ。
シュウジじゃなければ分からないこと。それが全て、伝わっていた。これまで必死にやってきたトレーニングのこと、動き、想い、今までの戦いの全てが。
巨大兎がどすどすと地面を鳴らす。終焉は間近だ。
アタシは巨大秋桜の前に飛び、宗ちゃんが動きに合わせて来る。何の綻びも……——無い!
「「薄明の光が白炎となる」」
「僕の」
「私の」
「……俺のッ」
通信機に、声が響く……
「「「力を光に変えて」」」
傍に居なくても、存在は絶対に、消えない。
「「「降り注げ!!」」」
心は、消えない……!!!
「「「ディストレス!!!」」」
「「「バーキング!!!!!!!!」」」
「「「アローー------!!!!!!!!!!!!」」」
満月の夜、儚げな秋桜は、光に包まれて消えた。
強く、生まれ変わるために。
後には黄金の別世界みたいな光景だけが残り、アタシは不謹慎にもその光景があまりにも綺麗で……しばらく涙を流した。
「は〜い、お疲れサマ~☆☆☆はいはい、お団子食べて食べて~☆☆☆」
家に帰ると、ちゃぶ台いっぱいのお月見だんごが宗ちゃんとアタシ、玲鷗を待っていた。
きび入りの黄色いお月見団子。みたらしで食べる。雪子さん、由子さん、幸子とシュウジで作って待っててくれた。楓も居る。
「えっ!?おいしそー☆!!……ん!んん!!」
山盛りのお団子に、思わず幸子みたいな口調になってしまい、慌てて深呼吸する。
でも宗ちゃんと玲鷗とアタシだけが頑張っている訳じゃない。みんなで、祝宴を楽しみたい。
(あれ、母と、……サブローもいないじゃん!!仕方ないからサブローの分も残して置いてやるか!)
アタシは母のだんごを藤色の小皿に可愛く盛り付けながら、(一応デカめのタッパーにサブローの団子も入れてやったけど!)月夜を楽しみながら、気づかなかった。
最近目を合わせてなかった、サブローの哀しみに。




