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「堕ちるっ!」
あれが堕ちたら……何かが終わる……そんな気がした。
「「バーキングアロー!!!」」
そのままの形で堕ちる白い蕾を、宙で消し去る……
「どうしたの?姉」
「わかんないけど……」
うまく言えない。予感でしかないけど、あの蕾を堕としてはならないと、イヤリングが騒いだ。
「ま、深呼吸したら?」
「そうね」
気づいたら、うまく息が出来てなかった。
アタシはさっき見た、ルリビタキのふわふわの羽毛を思い出して、ふぅーと息を吐いた。
コックピット内の酸素は、アタシたちが心地いいように絶妙なバランスで供給される。
それでも、不安に駆られる心は時々、それを拒否してしまう。
シュウジが取り付けたプリズムボールが、モニターの向こうの景色を輝かせるようにキラキラと反射した。
「アタシも……何か飾ろうかな」
「いんじゃない?」
幸子はコックピットのペイントも内部も、全部変えてるってそういえば言っていた。
でもアタシは最初のこの仕様が好きだ。
なぜだかは分からないけれど。
碧い空間に美しい画面が景色を映す。
「ありがと、シュウジ。落ち着いたよ」
「ウィ」
「「薄明の光が、白炎となる」」
力が、水素針に集まる
「「俺の/アタシの力を光に変えて!!」」
息が心地よいことを思い出す
「「降り注げ!!!!」」
——……えっ!?




