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「寒そうだね、外」
「だいじょぶじゃない?冬が好きな生きものもいるしさ」
モニターの向こうの、枯れ山を見つめる——
早朝の朝靄の中で、赤や、裾野にまだ残る緑が、どこかクリスマスを待っている風景に重なる。
「うわっ可愛い!!!」
モニターに映る枯れ枝に止まる小鳥の、脇腹の黄色がきらきらと朝日を反射した。
——ルリビタキ……
モニターの碧いテロップまで可愛く見えてくる。
「姉、機嫌良さそうだね」
「早起き気持ちがいいからさ。アンタは凄いね。毎日だもん」
「休む時もあるよ。筋トレの場合は休みを挟んだほうがいいからさ」
「そういうよね」
たぶん外は、朝のひんやりした清々しい空気が広がって、日を、過ごすちからを心に広げる風が吹いてる。
イヤリングが揺れる。
「姉、あれだよね?」
「うん……」
紅葉と、枯れ枝の秋と冬の間の景色の中に、巨大な白椿の蕾——……
それは懐かしい誰かのピュアな心みたいに、秋と冬の間に実っていた。
珍しく、動物型のディストレスの気配がない。
なんどもやって来たから、心配もない。
「じゃ、やろっか」
「うぃ」
水素針の具合もいい。
ふぅ、と深呼吸する。
「「薄明の光が、白炎となる……」」
「俺の/私の力を光に変えて!!!」
「降り注げ!!!」
イヤリングが急に……——揺らいだ。




