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「ミカ、ボールペン新しい?」
「う、まぁ……」
デニムのペンポーチに、銀と灰色のペンが増えてきたから、ペンポーチは二個持ち。
キャンパス地のベージュのポーチから定規を取り出して、び——……とノートにアンダーラインを引く。
好きな色で目立たせるほうが、記憶に残る気がする。黄色の蛍光マーカーも、綺麗だけれど——……
放課後の教室は、幸子とアタシと、珍しくジュンが居た。
「補習だ」
ハァ、とため息をついて、ジュンは椅子の背もたれにずるずると寄りかかった。
「え、初めてじゃない?」
「だとしたらどうなんだ」
「そうね」
また聞きだけど、新型機は出ずっぱりのようだった。
毎日、何かしらのニュースで見たり、ロビーの搭乗インフォメーションに予定が映し出されている。
でも、顔色は悪くなかったし、たまに他のメンバーとごはんを食べには来ていた。
まだあそこが我が家だと知っているのかは分からないけれど、マイカップでココアも淹れている。
たまに、皆んなの分を淹れてくれるけれど、幸子が淹れるふわふわのココアとは違って、ぴり、っとしたショウガの味が効いていた。
この冬に似合うように。
ピュアココアの缶詰が軽くなっていた気がするから今夜、買って帰ろう。
「一緒に受けて帰るのか?ほっしー。鑑原三女」
冗談も初。
「いーけど?☆」
いやいや……
「先に帰ろ?幸子」
マンハッタンの夜景は、赤と緑と、青白い星。線香花火みたいなアステリズムが、遠くまで広がっている。




