685
11月も半ばになるけど、先週あたりからどこも、かしこも本格的に冬のイルミネーションが街を照らし始めていた。
欲しい文房具があって大きい駅に来たけれど、高層ビルの隙間の星々が、アタシに元気も、切なさもくれる。
大きい横断歩道で、たくさんの人に紛れて、向こう側のバックライトサイネージをぼんやり見つめる。
そういえば、あの辺りのバス停で、みんなで海に遠足に行った。
ずっと、おしゃべりして、誰が持ってきたのか、クランチチョコを食べ過ぎて、散々だった。
けど、洞窟の向こうに見える海が、切り取った絵みたいで綺麗だった……——
……——信号が変わる。
駅の横のカフェは一杯で、アタシは冷たい大理石に寄りかかって買い物メモを確かめた。
グレーのインクのボールペン
猫のシール
それは、なくても構わないものだけど。
街路樹は、誰かの幸せを願うように、しんしんとした色で輝いている。
赤や緑の装飾が流れていって、アタシは橋を渡る。
吸い込まれそうな、紫がかった紺青いトンネルが、百貨店の入り口まで続いていた。
もしかして宇宙を歩いたら、こんなふうかもしれなかった。
月曜日だから、きっと混んではいないだろう……
駅に向かう人たちを横目に、アタシはこの街を見つめた。




