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しらすの塩気が、暖房の効いた部屋の中にふわっと広がった。
セーラー服だと少し寒いから、女子たちは思い思いのカーディガンを羽織る。
本部の食堂の大きな窓からは、中庭の桜が見えていた。
授業の合間のごはんが、寒くなってきて最近楽しみで仕方ない。
「ねー……なんで冬って寒いのかなー……」
「それってさ、なんで夏は暑いのかと同じ質問だよね……」
「だってー……!!!☆☆☆」
幸子がニットごとつっぷしたテーブルは、誰かが丁寧に編んだのか、レースのテーブルクロスがかかっていた。
中庭には木枯らしが吹いているのか、落ち葉がくるくると舞っている。
「ほうじ茶入れてきたわよ」
レイチェルさんの髪型がまた変わってる。前はレイヤーボブだったのが伸びて、サイドアップが冬みたいで綺麗。
「ありがとうございます」
「ハピたんちゃんどうしたの?」
「どうもしませんケドー……⭐︎⭐︎⭐︎」
密かに、アタシはレイチェルさんのモヘアのカーディガンも可愛いと思っていた。ああいうのアタシ、似合わない。
「はぁ〜〜和む」
冬のほうじ茶は、あったかい部屋で食べるアイスくらいにおいしい。
まだ緑だった桜の色はもう褪せているけど、それが返って綺麗な気がした。
冬が、たぶん来ている。




