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「ミカ君、こっちきて、こっち!」
こんな風に呼ばれることも何度も在った。
というか、基本的にサブローは気楽。特別なマフラーは、乾くのに少し時間がかかるから首は寒いけど、久しぶりにサブローの楽しそうな様子に安心したからOK。乾かす時間も、風を感じる。
「HyLAが保管してた真珠のこと、覚えてる?」
「東京大渓谷でみつけたやつ?」
サブローは、寒さなんて感じてないかもしれないけれど。
アタシは何度となくそう思うことが在った。
「真珠の作り方ってさ、殻にこもった柔らかい部分を、わざと傷つけるんだ」
知ってる。傷を守る反応が起こって、美しい真珠が生まれる。緑の島の木々の水滴が、真珠みたいに輝いたのが見えた。
サブローは、大丈夫だろうか……
「ミカ君、心配してる?」
心を読まれて、アタシはイヤリングに触れる。
宗ちゃんとサブローが、一緒に作ってくれたAId検出装置……
「父の戯れなんだ。全部。……実験的なね」
これを、アタシは訊かなければいけない。
……違う、訊きたいと思った。
サブローのサングラスに、空が反射してる。綺麗な空が。
「現代の禁忌はさ……時を遡ること、そして……」
「人間のAI化……」
言葉に出した瞬間、やけに空気がしんとした——……アタシはサブローにもらったいくつかの言葉を、思い出したりした。
「アタシは、サブローは愛されてたと思う」
イヤリングが騒ぐ理由。
——サブローの瞳。
サブローはAIだ。はじめからずっと
□□□昔のエピソードのセルフオマージュです
人が変わっても、歴史は色をよくしながら繰り返すのかなと
(同じことは起こっても、ちょっとずつ良くなってるというか…)
サブロー、愛されてないんじゃないの…(はらはら)
という気持ちと、
愛されててほしいという二つの気持ちがあります□□□




