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「「一、ニ、サブローッ!!!」」
「おかえり、寒かった?」
学校で褒められた日、……信号で人を助けた日、人に優しさを贈った日、仁花はなぜかそれを知っているかのように、いつも元気な笑顔をくれた。
「寒くなかったよ」
「そっか!いつもお疲れさまっ!!!」
鴨居のフックに掛けた白いマフラーは、今ミカ君がしている。
「絶景だねぇ」
光を放つ窓から見る景色は、空の蒼と深い海が混ざって、どこまでも行けそうだ。
「ミカ君、そのマフラーさ、エアボートみたいに翔べるんだよ」
「そうなの?」
「あの島まで行ってみない?」
ああいう緑の島に、いろんなものが埋まってる。美しい植物の営みも、忘れたい遺産も。
「いいよ」
俺の覚悟が伝わったのか、ミカ君はリュックを背負い直してくれた。
「一緒に、桜を見に行ってくれる?」
「あるんだ、あの島にも」
「たぶんね。あ、マフラーは低いところじゃないと使えないから、また降りるけど大丈夫?」
「?全然平気だけど。……あそっか、最初アタシ、走れなかったもんね」
「あ、ごめん。ついね、つい。古いマフラーなんだ」
「大丈夫だよ」
下りのほうが脹脛が痛む。でも君は鳥みたいに軽やかに道を進んでいく。
水に浮かべたマフラーは、君の楽しそうな笑顔を急スピードで島へと運んだ。
⭐︎⭐︎⭐︎
寒くなってきて風邪ぎみかもな最近。
読み手さんは大丈夫ですか、汗
どんな体調のときも、
綺麗な景色を表現する時間をつくりたいが
少し矜恃?こだわりたいこと。
(時には絶景うらやましっ⭐︎と思いながら書いたりもしますけど…⭐︎)
初冬の思いやりに幸あれ⭐︎⭐︎⭐︎




