表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
薄明のハイドロレイダー  作者: 小木原 見縷菊
帰り花……——カミング、ノベンバー
720/745

675

「ちょうど良いベンチがある」


 光源電球があおく光るたびに、君のマフラーがあおに染まる。


内部なかで見ると、案外淡い光なんだね」


 360度グラスアクリルの窓辺で、ミカ君は水平線を見ていた。


「たぶん、灯台守とうだいもりのためにね」


 HyLAハイラでも、誘導灯火(とうか)の色は遠くで鮮やかに、近くで淡く光るように設計されている。


「だからこんなに優しいんだ」


 ミカ君は隣に座って、灯台のに目を輝かせていた。


「茶色の表紙の本……あれさ、俺のあねが書いたんだ」


「サブローの、おねえさんかぁ」


「……うん」


 隣にいるのはよく知ってる子なのに、なぜだかそこに、家族がいる気がした。


 ……懐かしい、風の色。


「サブローの誕生日会の時にさ、声、流れてた人?」


「——なんで?」


「なんとなく」


「……そうだけど」


「……そっかぁ」


 心がきしんで、それから包まれる気がした。


「なんで?」


 こたえがわかる気がするのに、繰り返したくなる。こたえが返ってこなくても構わないのに。


「たくさん、組織に貢献した人だって、みんなが。サブローのお姉さんなんじゃないかって思ってたの……よ」


 自信なさげに目を泳がす君が、それでも強く拳を握るのが見えた。


「ごめん」


「いや、聞いて欲しかったんだと思う、誰かに」


 ……たぶん君に。


 遠くの緑の島に、光が反射するのが目の端に焼き付いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ