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薄明のハイドロレイダー  作者: 小木原 見縷菊
帰り花……——カミング、ノベンバー
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 登ってみようか。


 声にせずとも、隣のこの子はこく、とうなずいた。


 灯台守とうだいもりに挨拶し、格子の門を開けてもらう。


 灰色の階段は、たし、と足音がして、なぜか心地よかった。


 ……こういううてなを何度も登った。


 人生でも、心でも。


「ミカ君、随分体力ついたねぇ」


「え!?ま、まぁね!!」


 軽々と登っていく少女を、ずっと見守ってきた。


 その羽が広がる景色を、俺は予期していたのかもしれない。


 かたすみで、痛みを隠しながら。


「大丈夫?」


「ちょっと最近寝不足で……」


「寝不足にはバナナよ」


「いいね」


「シュウジが教えてくれたんだけどさ」


「シュウジ君か……なんでも知ってるよね、謎に」


「まぁね!」


 自分が言われた時より心地よさそうに君が笑ったのが、君らしい、と言える今が俺の世界だ。


 階段が、続くにつれて返って鼓動が穏やかになる今がある。


 窓から、光が差し込んでいる。


「ミカ君、気をつけて」


「大丈夫っ」


 足元が狭くなっても、目的地はすぐそこだ。


「これだよね?」


 ゆきどまりに、小さな扉。


 それはなんの変哲へんてつもなくて、それが返って、懐かしい感じがした。


「開けるよ」


 白波とブルースカイ。


 水平線に島が浮かぶ。


「いいね……落ちつくっていうか」


 君の瞳が輝いているかは見えないけれど、俺にはわかる気がした。

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