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「「ふぁ~む」」
円盤の後部座席でウトウトとしていたシュウジと楓が同時に目を覚ました。
いつの間にかアタシも少しウトウトしていたみたいで、あくびをしながら周りを見回す。円盤は停車(停盤?)しているようだった。
「なにここ……」
だだっぴろいアスファルト風の駐車場は、四方を森に囲まれている。
アタシたちの他にも、いくつかの車が停まっていて、公園?のようだった。
「楓にハーネス付けたよ」
楓は呼べば来る猫だけど、ペットAIdには外出時、ハーネスを付ける決まりだ。途中まで自分で着てくれる仕草が可愛い。
アタシたちは駐車場の横の売店のテラスであったかいお蕎麦を食べて、気持ちのいい夜の森を歩いた。
空色の街灯が点々と並んで、夜だけど、不思議に澄んだ青い道。風が、ざわざわと森を通り抜けていくのが心地よかった。
「ここって何なの?」
「……記憶野原」
「……それって……!!!」
急に道が開けた。
月が輝く美しい草原に、星のような球体がいくつも浮かぶ。
薄闇の絨毯に星屑を零したようなこの美しいミルキーウェイ。
このひとつひとつが何であるかをアタシもシュウジも知っていた。
ここは大世界の人工島の消失で失われた人々の記憶を弔った墓標の地……。
「……記憶野原……」




