06
激しい警告音が響く中、アタシは楓を抱き上げた。
弟は急いでドアを閉め、叫んだ。
「実華!」
「うん!」
私は弟のひっぱり出してきた座布団の上に乗った。
ディストレスが現れた時は逃げるしかない。
人類は亜空間にシェルターを作った。
異次元の空間で、嵐が過ぎるのを待つしかない。
二人と一匹が乗るとぎっしりの座布団。
弟がスイッチを押すと、私たちは三畳ほどの碧の空間にワープした。
そして、AIdは進化を続ける……。
亜空間を切り裂く個体が、今、次々に生まれている。
シェルターも安全ではないのだ。
「まさか、こんな狭い空間狙われることはないだろうけどね……って、え!?」
ニュースで見た。
亜空間にAIdが侵食してくる時は、まず空間の色が変わる。
夕焼けのような朱に。
「ちょ、やばくない!?……ちょっと!!!」
それから、火花みたいなスパーク。
「痛っ!!!!だ、大丈夫?楓!シュウジ!!」
火花の痛みにちょっと涙が出てくる。
「姉!出たほうがいいかも!!わ!!!!」
獣の爪みたいなのが、空間を裂くように弟の後ろに現れた。
「シュウジ!うしろ!!!!!」
「出よう、学校のシェルターに行こう!!!」
弟に引っ張られて、私はつんのめりながらも必死に楓を抱いていた。
アパートの天井だったはずの場所には暗い夜空を背景に、どう猛な大猿が私たちを見下ろしていた。