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本の私空間に通ったり、ショーコや幸子と少し話したりして、夏休みはあっという間に終わった。
搭乗演習もやったし、Hylubの夏季講習にも通った。
そして新学期も始まり、九月もあっという間に終わろうとしている。
「ほっしー、お疲れ」
「お疲れ、今終わり?」
マックスは離脱前の活躍並みに、Eighthのエース搭乗者としてまた活躍していた。
何かを吹っ切るように。
「うん」
アタシは放課後はもっぱら本の部屋に居たから、搭乗が終わったマックスやミシェルさん、エミリーさんと会うことが増えていて、たまには喫茶室でお茶をしたりすることもあったけど、今日はお腹が空いている。
「くれば?今日シュウジが焼き鮭焼いてるみたいよ」
「そうしよっかな」
ここにも好きな人がいるのだろうか、Eighthの通路も、エリアB並みに宇宙感がある。
歩くたびに微弱に発光する通路を抜けて、アタシはマックスとFirstの地下基地までワープした。
アタシは知らなかったけど、既に、マックスのお茶碗は我が家にあったらしい。
ベージュが好きなんだよ、マックス君は。黒でも緑でもなくて。とある時シュウジが言っていた。
そういえば、マックスのレコードジャケットは、陽の光や木漏れ日、陽だまりのようなベージュの光のイメージが多かった。
「おかえり!姉っ。あ、マックス君!!」
ドアの向こうから、焼き立ての鮭の匂いがふんわりと香った。




