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遥か遠くに見える天窓から、月光が差し込んでいた。
一畳あるだろうか……ごく小さなスペース。
それでも、なぜだか心地が良くて、心がふわふわと浮遊してるみたいだ。
「わっごめんね!!」
背中に、小松さんの白衣がぽん、と触れた。
「鍵が、電気のスイッチにもなってるわ。思い浮かべてみて」
ワープトリガーにもなっていて、icomにもなっている小さなカギ……これは、高いやつ。……アタシは深呼吸して、部屋に灯りを灯した。
檸檬色の、ふんわりとした灯り。
「趣味、いいわね」
「いえ、なんとなくです」
思い描いたイメージ……がリアルに再現されればされるほど、高い……
アタシは深呼吸して、周囲を見上げた。
「この辺は、私からの贈り物。この辺りは、シュウジ君ね」
四方全て、天窓まで永遠に続いている本棚。絵本に見せかけた科学の論文のコーナーと、古代の少年漫画のコーナーに目を走らせているうちに、小松さんはアタシの前に身体を潜り込ませて振り向いた。
「誕生日おめでとう、ミカちゃん」
オークのライティングデスクと、小松さんの書斎に在ったようなホバー・コア・ポートが小さな空間に半月みたいに浮遊している。
「凄いでしょ?これがあなたへの誕生日プレゼント。みんなからのね」
月を浴びる梟みたいに、アタシの心は鳴った。




