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もうすぐ昼休みが終わる。
幸子のドーナツはまだ在って、屋上テラスのウッドテーブルにはマックスが買ってきてくれたアイスカフェラテが並んでいたから、アタシはマックスにドーナツを勧めてみたりした……
幸子は、それを止めもしなかったし、怒りもせず、俯いている。
いや、怒っているのか???
……もともと、幸子からマックスの話を聞くことはなくて、マックスが離脱した時も、今回の件が起きた後も、幸子とマックスの話はしていない。
……いや、聞くのがなんか……というか、急に知らない世界の話みたいに思えて、距離を感じたくなかったのかもしれない自分に気づく。……こんな時に。
だからアタシは何も言えずに、カフェラテを飲むしか無かった。
幸子やロボ菜ちゃんみたいなコたちが、許せない。と思う気持ちが正だとも思うし、自分もそう在りたい気もしてくるけれど、アタシの両手は、二人の前にカフェラテを移動させた。
屋上カフェのカフェラテはおいしいから、飲んでほしいと思った。……氷が溶ける前に。
……誰も、なんにも言わないよ——…
それでも、ドーナツとカフェラテの味は、いつもみたいに、おいしい。
「おいし」
アタシの独り言は青空に消えていくけれど……
……味がしなくなる、その前に




