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冷やしわかめうどんが滑りそうになる!!
「なぜ、Hylubに……?」
カツ丼の湯気の向こうで、絶妙に腑に落ちない表情で、ロボ菜ちゃんがマックスを——見上げていた。
3組の屋上カフェのテラスは、日除と空間冷却が完備してあるから気温は涼しい筈だけど、花火の後みたいに空気が熱い。ロボ菜ちゃん、なんか怒ってる……?
「ケンカはしてないよ、ほっしー」
「そ、そうなんだ」
ロボ菜ちゃんの隣のウッドチェアに恐る恐る座る。
マックスは涼しげにコーヒーを飲んでいた。
そういえばロボ菜ちゃん、幸子とマックスのコンサート、楽しみにしてたもんね……なにより、真っ直ぐなコだ。マックスに対して思うところがあるのかもしれない。
「……全部を知ってるわけじゃないから」
ロボ菜ちゃんは独り言みたいにそう言った。
「カツ丼、おいしい!」
「だよね!」
アタシの冷やしわかめうどんも、つるりとした喉越しがさっぱり、おいしかった。
あ、やば、……マックスの足を見てしまった。
「これね。頑張ったら前より長くなってさ」
「なんか……いいね、それって。」
「自分でもわかってないけどね、仕組みが」
出汁に絡んだわかめが美味しい。
「……幸子、たぶん来るけど」
みんなのドーナツを持って。
「うん。謝らなきゃ」
アタシは、夏季メニューの冷たいお出汁の味を噛み締めた。




