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七色の花びらのような光が、画面の中に舞っていた。
夜すらも光り照らす、太陽のような優しさに包まれた姿は、時折り見せる兄の、かつての明るさのようにも思う。
好きなものを語る時の、穏やかな瞳にも……——。
画面に広がるアップルミントの可愛らしい蕾は、ハイドロレイダーのバーキングアローと、旧コランダムが編み出したクリザンテームドゥヴリで跡形もなく、消え去っていた。
日差しのような光でうっすら発光するその姿は、過去のしがらみが遠い昔の記憶であるかのように、陽だまりみたいに輝いている。
「……お疲れ様。宗ちゃん、マックス、リイヤ、ジュン」
マックスの処遇がどうなっていくのかは、分からない。これが合っているのかも。
でも世界は美しく、元の世界へと帰れる錯覚を起こすのには充分だった。
「ただいまー」
「ぎょっ!!!」
アタシは焦ってリモコンを消した。
「……どしたの?……姉」
「な、何でもないよ!!!手洗ってきなよ!!お、おでんあるからさ!!!」
「?……ありがと?」
弟はいつもの通り、青いランドセルを机のフックに引っ掛けて、楓に拳の匂いを嗅がせてから洗面所に消えた。
アタシはガラスサッシを開けて、ガスコンロのつまみをチチチチ……と回した。
新型レイダーのチームに選ばれてもおかしくない——……と、アタシがシュウジなら思ってしまう。




