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富士の裾野に広がる荒野に、巨大な薔薇が一輪。
「大丈夫?——雨沢君」
「大丈夫ですよ。小松さん」
けれど本心では無い。
苦しくて堪らない。
「三島さん、なんでココにしたんですか?仮想亜空間」
「……君が、最初に合同作戦を成功させた場所だからやりやすいんじゃないかと思ってさ」
手が震えていた。でも、一番後ろのコックピットの様子を、前の三人が気づく筈は無い。
「……何で俺が真ん中なの?宗」
「……監視の為だ」
マックスの半身は修復されていた。
「っそ。ジュンはハイドロレイダーはいいのか?」
「まぁ、ほっしーとシュウジだけでも動くしな……」
純之助は新しいレイダーに少なからず高揚しているように見える。
「SLTの活動は今無いし、結局ファントム改も流れちゃったしな……」
「ごめんね!キュロス君……でもどう!?新型レイダーの乗り心地は!?」
「正直……いいです。広いし、サウスポーの俺が左手担当なんで、なんか集中できるっていうか」
新型は基本的にはicomで全員が全身操作可能だ。けれど、各部位の担当者が意思を込めた時、それは何より優先される。
右手が純之助のホログラムマカロフ、周囲に張り巡らされる改良されたホロ・カルトロップをマックスが……ブレーンを俺が担う手筈だ。
「あ、なんかネガティヴ四天王、ここに集結せり?」
「否めないな、リイヤ」
「Hey, guys.謝っただろ?」
前を向けないでいるのは、俺だけなのかもしれない。それでも——……




