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さまざまな疑問を感じつつ、HyLAのジャケットを身に付ける。
シュウジでもなく、ジュンでもなく、幸子でもなく、なんでアタシが……
浴室の洗面台の鏡に、支度した姿と、イヤリングを映す。
……別に警戒しているわけじゃ無い。
搭乗時のスタイルのほうが、話しやすいと思ってもらえるんじゃないかって思った。
「だって仲間だし……」
アタシの独り言は、浴室の小窓から消えていく。
和室に戻って楓を撫でると、弟が寝返りを打った。
……昨日シュウジは、別に疲れているわけじゃないと言った。でも男子は、疲れを自覚できない時があるんじゃないかとも思う。
「はぁ……」
仕方あるめェ……シュウジたちが言いそうなセリフを繰り返して、アタシはHyLA-Eighthに向かった。
「何度もごめんね」
レトロなメゾンのエントランスには、古びた自動販売機がじわじわと光を放っていた。
アタシはなんかもう、観念していたし、マーガレットさんの健康そうな笑顔を曇らせたくなかったから、「なんか謎なトコありますよね、男子って」と笑ってみせた。
マックスは、昨日目が覚めたようだ。
シュウジが初めに話すのかと思っていたのに、弟はアタシを推した。
「マーガレットさん、そういえば何も持って来てないんで、自販機使ってもいいですか?」
アタシはロビーの自販機で、瓶コーラを買った。




